小売業月次売上高レポートvol.14
5月の小売業合計既存店売上高は0.9%増
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業197社の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
22サブセクターのうち、プラスは14サブセクター:
5月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比0.9%増、うち、純小売りは0.8%増、外食は1.3%増となりました。
5月は、ゴールデンウィークが過去最長の10連休となり、前年に比べ休日が2日多くなりました。また、月を通じて低気圧や湿った空気の影響を比較的受けにくく、一部地域では1946年の統計以降最も降雨が少なくなるなど、全国的に降雨量が少ない月となりました。東京では、月後半に30度を上回る日が4日あるなど全国的にも前年より暖かく推移し、夏物商品が各社好調だったほか、降雨日数減や休日増から、売上がプラスとなるサブセクターが多い月でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、家電量販店(8.5%増)、回転寿司(5.0%増)、身の回り専門店(3.2%増)。下位3サブセクターは、スポーツ専門店(6.6%減)、家具・ライフスタイル型専門店(2.8%減)、本・CD・DVD販売/レンタル専門店(2.3%減)でした。
家電量販店では、コジマ(7513)が14.6%増と好調。気温の上昇を受けて、買い替えキャンペーンの強化を実施しているエアコンの販売が好調に推移したことに加え、NTTドコモの料金プラン変更に伴い、端末代金の大幅な値下げが無くなることを懸念した携帯電話の駆け込み需要が発生し14.6%増と大きく伸長しました。コジマでは、2017年7月以降プラスが継続するなど、同業他社比堅調な推移が続いています。会社側では、2016年10月より開始した「くらし応援便」という販売員自らが商品の配送や修理品の引き取りに出向くサービスがシニア層やファミリー層などに支持され、徐々に顧客化が進んでいること、また、自転車や酒類などの非家電商品の取り扱いを開始したことで、客数が増加し、買い回りが増えたことを一因として挙げています。
また、5月は外食が比較的好調に推移しました。回転寿司が第2位となったことに加え、ファミリーレストラン、ファストフードもそれぞれ第5位、第7位となるなど、連休中の休日増などにより、外食全体の既存店売上高は、2017年12月以降最も好調な月となりました。
回転寿司は、4月に続き好調。スシローを展開するスシローグローバルHD(3563)が9.9%増、かっぱ寿司を展開するカッパクリエイト(7421)が5.4%増、元気寿司(9828)が4.8%増、にぎりの徳兵衛を展開するアトム(7412)が4.3%増と、各社客数増が牽引役となり大きく伸長しました。また、苦戦が続いていたくら寿司(2695)も0.4%増と7ヶ月振りに上昇に転じるなど、同サブセクターに含まれる全ての企業がプラスとなりました。加えて、ファミリーレストランでは、餃子の王将を展開する王将フードサービス(9936)が新元号記念キャンペーンで実施した生ビール100円引きや、プレミアム商品のリニューアルが奏功し6.2%増と好調に推移したことや、和風レストラン「まるまつ」などを展開するカルラ(2789)やロイヤルホストなどを展開するロイヤルホールディングス(8179)も、共に4.4%増と好調でした
アパレル専門店は2.4%増と、前月の下位サブセクター第2位に対し、5月は第4位と大きく改善しました。降雨日数が多く、比較的最高気温が低かった前年同月に対し、5月は夏物商材の需要が高まりました。シーズメン(3083)(13.4%増)、アダストリア(2685)(10.7%増)など、一部のカジュアル衣料品専門店が大きく伸長したことに加え、前月に大幅な落ち込みを記録した紳士服専門店がマイナスながら大幅に回復したことで、サブセクター全体の大幅改善に繋がりました。
一方、行楽日和が続いたにもかかわらず、スポーツ専門店は最下位のサブセクターになるなど不振でした。ゴルフ・ドゥ(3032)が最大の山場であるゴールデンウィークに売上を取ることができず、客数客単価共に前年を下回り15.0%減となりました。また、ヒマラヤ(7514)は、恒例で実施しているセールを4月に前倒しした反動で11.2%減となり、全体を大きく押し下げました。ゼビオ(8281)、アルペン(3028)は、それぞれ1.9%減、1.7%増と、アウトドア需要の高まりからNBの衣料品を含むアウトドア関連商材などが堅調に推移し、同業他社に比べしっかりとした動きでした。
「3-12」トップスリー:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが浮上・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
京都きもの友禅(7615)、テイツー(7610)、うかい(7621)
3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
京都きもの友禅(7615)、ワークマン(7564)、マックハウス(7603)
既存店客数および客単価の推移:
5月の客数及び客単価は、それぞれ0.7%増、0.8%増となりました。客数は、ゴールデンウィークが過去最長の10連休となったことに加え、降雨日数が少なく気温が高めに推移するなど天候に恵まれたことなどから、25ヶ月振りにプラスに転じました。客単価は、2016年10月以降プラスの推移が続き、客単価が既存店売上高の牽引役となる状態が続いていますが、昨年7月以降はプラス幅が一気に縮小に転ずると同時に、客数のマイナス幅も縮小し始めゼロ近辺まで近づきつつあるなど、消費者の価格志向のトレンドに変化が見られ始めています。
5月度データ集計企業数は、197社(純小売り138社、外食59社)でした。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem