小売業月次売上高レポートvol.16
7月の小売業合計既存店売上高は3.7%減
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業200社の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
22サブセクターのうち、プラスは2サブセクター:
7月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比3.7%減、うち、純小売りは4.4%減、外食は2.1%減となりました。
7月はオホーツク海高気圧から冷たい空気が流れ込んだ影響や台風5号、6号の上陸によって全国的に低温多雨の月となりました。関東地方では梅雨明けが昨年に比べ1ヶ月遅くなったことに加え、東京都心では観測史上最長となる33日間連続降雨に見舞われるなどし、降雨日数は前年よりも15日多くなりました。また、東京の平均最高気温は前年を5.2℃下回ったことで季節品の客足が遠のき、プラスのサブセクターは2サブセクターに留まりました。
7月度データ集計企業数は、200社(純小売り139社、外食61社)でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、リサイクルショップ(3.9%増)、その他(1.0%増)、ファストフード(0.1%減)。下位3サブセクターは、スポーツ専門店(9.0%減)、アパレル専門店(8.1%減)、ホームセンター(7.8%減)でした。
リサイクルショップでは、天候不順によって小売各社が苦戦する中、コメ兵(2780)が13.1%増、ワットマン(9927)が3.0%増、ハードオフコーポレーション(2674)が2.3%増等と、好調な企業が目立ちました。中古品販売市場は、2018年10月の古物営業法改正により買取場所の規制が緩和されたことで買取(仕入れ)が活発となったことに加え、メルカリの台頭により潜在需要が掘り起こされたことや、個人間での交渉が面倒な一部の消費者がリアル拠点であるリサイクルショップを利用するなど、市場の拡大が各社数値に表れています。
「その他」サブセクターでは、自動車用品の通販サイトの運営を行うフジ・コーポレーション(7605)が20.0%増、ワークマン(7564)が16.3%増と、それぞれ全銘柄の上位1位、2位の成長率となり、サブセクター全体を牽引しました。フジ・コーポレーションは消費税増税と8月からの国内タイヤメーカー各社の値上げを懸念した駆け込み需要からタイヤが好調に推移し、売上を押し上げました。ワークマンは、冷夏の影響から人気の空調ファン付き作業服などが伸び悩んだ一方、吸水速乾などの高機能商材やレインアイテムが好調に推移し売上を牽引しました。
ファストフードは、上位3位にランクインしたものの微減収となりました。松屋フーズ(9887)が昨年の反動増と、うなぎを使用した新商品の販売が好調で、7.4%増と同サブセクター内、トップの伸長率となりました。ラーメン専門店の一風堂を展開する力の源ホールディングス(3561)は、2019参議院選挙の際に投票所で受け取ることのできる「投票済証明書」を提示することで、割引や特典などのサービスを受けられる「選挙割」の実施や、前年は猛暑による客数2ケタ減となった反動増で、6.3%増と好調でした。
一方、アパレル専門店では、低温多雨の影響を受け、弊社が集計する23社中増収の企業は2社に留まるなど、各社厳しい状況となりました。しまむら(8227)では、TVCMを放映した接触冷感寝具や夏物衣料など季節商材が不調に終わり、17.5%減と全銘柄中最下位となりました。また、紳士服専門店では、ビジネスウェアのカジュアル化によって業界が伸び悩む中、冷夏の影響によりクールビズ関連商材が不調に終わり、青山商事(8219)が12.5%減、AOKIホールディングス(8214)が11.8%減、はるやま商事(7416)が10.5%減と、各社2ケタ減収となりました。
ホームセンターでは、気温低下の影響などを大きく受け、弊社が集計する11社全てが減収となりました。ホームセンターのケーヨーデイツーを展開するケーヨー(8168)は、冷房や接触冷感のラグ・寝具などの季節商材が不調に終わり13.1%減となりました。DCMホーマックなどのホームセンターを展開するDCMジャパンホールディングス(3050)は、園芸・DIY関連商材など屋外で使用する商品が振るわず、9.2%減となりました。
「3-12」トップスリー:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが浮上・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
京都きもの友禅(7615)、ワークマン(7564)、トリドール(3397)
3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
フジコーポレーション(7605)、ビジョナリーホールディングス(9263)、ゴルフ・ドゥ(3032)
既存店客数および客単価の推移:
7月の客数及び客単価は、それぞれ4.3%減、0.5%増となりました。客数は、記録的な長雨と冷夏によって季節品商材を求める客足が遠のいたことに加え、土日祝日が前年同月に比べ1日少なかったことから、観測史上最大の降雨量を記録した2017年10月以来の減少幅となりました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem