小売業月次売上高レポートvol.17
8月の小売業合計既存店売上高は2.4%増
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業207社の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
22サブセクターのうち、プラスは17サブセクター:
8月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比2.4%増、うち、純小売りは2.9%増、外食は1.2%増となりました。
小売業合計の既存店売上高伸び率は、気温低下で客数を落とした前月の反動から34ヶ月振りの高い水準となりました。
8月は前月の長梅雨の冷夏傾向から一転、月初から気温が急上昇し、上旬では日照時間が統計開始以降最も長くなる等暑い日が続いたことから、盛夏商品が好調でした。また、消費増税前の駆け込み需要に加え、前年同月に対し土日祝日が2日多かったことから、プラスのサブセクターが多い月となりました。
8月度データ集計企業数は、207社(純小売り142社、外食65社)でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、家電量販店(17.4%増)、家具・ライフスタイル型専門店(12.6%増)、その他(7.4%増)。下位3サブセクターは、中食(2.7%減)、通販(1.8%減)、スーパー(0.8%減)でした。
家電量販店では、増税前の駆け込み需要から各社大きく伸長しました。
コジマ(7513)は、気温の上昇に伴いエアコンが55.0%増と大きく伸長した他、中旬頃から洗濯機、冷蔵庫、テレビなどの大型家電も消費税増税前の買い替え需要により好調に推移し21.6%増となりました。
ビッグカメラ(3048)は、前月の冷夏の反動からエアコンや冷蔵庫などの家電商品が大きく伸長し13.1%増となりました。
家具・ライフスタイル型専門店では、HAPiNS(7577)は前年同月が低調だった反動増に加え、今年TVでも頻繁に取り上げられ大流行した携帯型扇風機「ハンディファン」の需要が梅雨明けから高まったことや、接触冷感アイテムなども好調に推移し、既存店売上高は29.9%増と、全銘柄の中でも第3位の伸長率となりました。
良品計画(7453)は、気温の上昇から盛夏衣類の需要が高まり、衣服雑貨が26.1%増と大きく伸長したことで、既存店全体でも12.0%増と好調に推移しました。
ニトリ(9843)は、梅雨明け後の気温上昇に伴い、前月不調に終わったNクールなどの接触冷感アイテムや扇風機などの小型家電が好調に推移し、8.9%増となりました。
「その他」では、ワークマン(7564)は、猛暑日が続いたことから、ヒット商品の空調ファン付作業服に加え冷感機能のコンプレッションウエア、クールスリーブ等の防暑機能付きの夏物商品が好調でした。特に、人気の空調ファン付作業服は、アウトドアやスポーツ観戦などにも着用出来るカジュアルデザインのラインナップを増やしたことで売上を大きく牽引し、既存店売上高は54.7%増と、全銘柄の中でも第1位の伸長率となりました。
自動車用品店各社は、消費増税に加え、8、9月のタイヤメーカー各社による値上げを受けて10月からのタイヤ上代価格の引き上げを予定していることから、駆け込み需要が発生し各社大きく売上を伸ばしました。自動車用品の通販サイトの運営を行うフジ・コーポレーション(7605)は17.0%増、オートバックスセブン(9832)は価格引き上げ前の特需に加え、あおり運転報道の影響からドライブレコーダーの販売が好調に推移し10.7%増となりました。
ランク外とはなりましたが、不調が続いていたスポーツ専門店は、梅雨明けの気温上昇に伴うアウトドア需要の高まりから上位サブセクター第5位にランクインするなど回復傾向が見られました。
ヒマラヤ(7514)は、キャンプ関連商材を中心としたアウトドア商品が好調に推移し10.9%増と好調に推移しました。豪雨等の天候要因からアウトドア需要が低調だった前年同月に対し、今年はキャンプ場の予約が困難となる等、外出意欲が高まったことが需要増に繋がりました。アルペン(3028)は、前月の長梅雨で低調だった夏物アパレルや水着、浮き輪などのマリン用品などを中心に各商品好調に推移し9.2%増と大きく伸長しました。
「3-12」トップスリー:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが浮上・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
京都きもの友禅(7615)、ワークマン(7564)、フジ・コーポレーション(7605)
3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
HAPiNS(7577)、ヒマラヤ(7514)、コメ兵(2780)
既存店客数および客単価の推移:
8月の客数及び客単価は、それぞれ0.7%増、1.3%増となりました。梅雨明け後の気温上昇により前月不調だった盛夏衣料やクールビズアイテムの需要が喚起されアパレル各社では客数の回復が見られる等、季節商材の客数改善が顕著にみられました。また、消費増税前の駆け込み需要から、家電など高価格帯商品が好調に推移しました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem