小売業月次売上高レポートvol.18
9月は消費増税前の駆け込みで大幅増収も、軽減税率導入を考慮した消費行動がサブセクター間で顕著に
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業205社の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
22サブセクターのうち、プラスは19サブセクター:
9月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比7.3%増、うち、純小売りは10.0%増、外食は1.4%増となりました。
小売業合計の既存店売上高伸び率は、前回(2014年3月)の消費増税前の駆け込み以来の高い水準となりました(前回の増税前月の伸び率は10.2%増)。
軽減税率の導入によりサブセクター間の伸長率に大きな差異が見られました。プラスのサブセクターが19サブセクターと非常に多い月となりました。
9月は前年同月に比べ降雨日数が少なく、天候に恵まれたことに加え、月末にはラグビーワールドカップが開幕し、訪日外国人による特需もみられました。一方で、初旬には、千葉県を中心に甚大な被害をもたらした台風15号が関東に上陸し、客足に影響が出る週末もありました。なお、曜日周りは、前年同月に対し土日祝日が1日少ない月となりました。
9月度データ集計企業数は、205社(純小売り140社、外食65社)でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、家電量販店(54.1%増)、メガネ専門店(22.7%増)、百貨店(22.4%増)。下位3サブセクターは、中食(1.7%減)、本・CD・DVD販売/レンタル専門店(1.2%減)、コンビニエンスストア(0.6%減)でした。
家電量販店では、コジマ(7513)が58.3%増、ビックカメラ(3048)が49.8%増と全銘柄の中でも伸長率が大きく、それぞれ第1位、第2位にランクインしました。増税前の駆け込みで高機能家電への需要が高まり、特に、冷蔵庫は新商品の発売前で価格が下がったことから大容量サイズを中心に販売が好調に推移しました。テレビも4Kチューナー内蔵モデルへの買い替え需要が高まり、両アイテム共に高い伸び率となりました。
メガネ専門店では、愛眼(9854)は、消費税還元セールの実施などの販促が奏功し、価格に敏感なシニアの女性を中心に高価格帯のメガネの販売が伸び、24.1%増となりました。三城HD(7455)では、同社が展開する金鳳堂が百貨店を中心に高価格帯のメガネの販売を大きく伸ばし、20.4%増と大きく伸長しました。
その他、ビジョナリーHD(9263)が25.8%増、ジンズHD(3046)が20.3%増と各社2割以上伸長し、好調なサブセクターとなりました。
百貨店では、高島屋(8233)がラグジュアリーブランド、時計、化粧品などの商品が外商を中心に好調に推移し31.6%増となりました。三越伊勢丹(3099)は宝飾品や秋の買い替え需要が高い時計などが売上を大きく伸ばし28.5%増と前回の増税特需時よりも高い伸び率となりました。その他、Jフロント・リテイリング(3086)が32.8%増、そごう・西武(3382)が20.2%増、松屋(8237)が17.2%増と、各社2ケタ増となりました。
加えて、第4位の「その他」では、自動車用品の取り扱いを行うフジ・コーポレーション(7605)と、オートバックスセブン(9832)が、タイヤの値上げ前の駆け込み需要を受け、それぞれ46.0%増、41.4%増と伸長しました。墓石・仏壇仏具を取り扱うはせがわ(8230)は、秋の彼岸に向けた需要の高まりに加え、高単価な仏壇の売上が伸長し、既存店売上高は26.7%と17ヶ月振りにプラスに転じました。
居酒屋では、ハブ(3030)が20日に開幕したラグビーワールドカップに向けて、昨年から訪日外国人に向けて行ってきた販促が奏功し、21.8%増と外食カテゴリーの中では1番の伸長率となりました。
増税前の駆け込みや、前年に比べ降雨が少なく、外出の機会が増えたためか、回転寿司、ファストフード、ファミリーレストランは特需こそはないものの堅調さが見られた一方で、その反動からか、中食は、プレナス(9945)4.2%減、ハークスレイ(7561)4.1%減など、各社厳しい数字となりました。
「3-12」トップスリー:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが浮上・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
京都きもの友禅(7615)、フジ・コーポレーション(7605)、ビックカメラ(3048)
3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
コジマ(7513)、ハブ(3030)、ビックカメラ(3048)
既存店客数および客単価の推移:
9月の客数及び客単価は、それぞれ1.5%増、2.4%増となりました。前年に比べ降雨日数が少なかったことに加え、増税前の駆け込みで外出が増えたことにより客数が伸長しました。また、家電やラグジュアリー商材などの高単価商品が好調に推移し客単価も大きく伸長しました。駆け込みによる押し上げもあり、既存店売上高伸び率3ヶ月移動平均値は、2015年8月以降初めて2%を超えました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem