小売業月次売上高レポートvol.19
10月は大型台風上陸と増税後反動で客数大幅減
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業203社の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
22サブセクターのうち、プラスは2サブセクター:
10月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比5.4%減、うち、純小売りは6.2%減、外食は3.6%減となりました。
消費増税前の駆け込み需要増の反動に加え、令和元年台風第19号(以下「台風19号」)の上陸により、都心を中心に多くの店舗が臨時休業したことから、小売業合計の既存店売上高伸び率は、前回の消費増税前の駆け込みの反動があった2015年3月以来の低い水準となりました。その結果、プラスのサブセクターが2サブセクターと非常に少ない月となりました。
10月は土日に台風19号が上陸し、政府より外出を控える注意喚起がなされたことを受けて、交通機関の計画運休が相次ぎ発表され、多くの小売店舗が営業時間の短縮や臨時休業を余儀なくされました。また、一部地域では記録的な大雨から浸水被害が発生し、営業停止などの被害を受ける店舗があるなど、多くの影響を及ぼしました。
曜日周りは、前年同月に対し土日祝日が1日多い月となりました。
10月度データ集計企業数は、203社(純小売り139社、外食64社)でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、コンビニエンスストア(2.2%増)、ドラッグストア(0.9%増)、本・CD・DVD販売/レンタル専門店(0.2%減)。下位3サブセクターは、家電量販店(19.4%減)、百貨店(17.2%減)、アパレル専門店(11.1%減)でした。
コンビニエンスストアでは、度重なる週末の台風の上陸によって客数が減少した一方、防災用に水や食料を買いだめする人が続出したことで客単価を押し上げたほか、ポイント2%還元施策が広く認知されたことや、前年10月のたばこ増税を受けて、駆け込み需要の反動減による低ハードルもあり、相対的に堅調な推移となりました。
ミニストップ(9946)はTVCMを放映したおにぎり常時100円セールなどのキャンペーンが奏功した他、新商品の「チーズハットク」や「タピオカドリンク」がSNSで話題になり、郊外地区を中心に好調に推移した結果、既存店売上高は6.1%増と大きく伸長しました。セブン-イレブン・ジャパン(セブン&アイ・ホールディングス)(3382)はポイント2%還元施策が奏功し、売上に寄与したことに加え、台風上陸による買い溜めや、ラグビーワールドカップの家のみ需要から客単価が上昇し、既存店売上高は3.4%増となりました。
ドラッグストアでは、クスリのアオキ(3398)(20日締め企業のため、10月度の集計期間は9月21日から10月20日)が消費増税前の駆け込み需要増の影響を受けたことに加え、10月1日から実施している自社プリペイドカード・現金払いによるポイント5%還元キャンペーンが奏功し、増税後の消費失速が軽減され18.5%増と大きく伸長しました。
カワチ薬品(2664)(15日締め企業のため、10月度の集計期間は9月16日から10月15日)は消費増税前の駆け込み需要増から、高単価な化粧品やシャンプー・リンスなどの日用雑貨類が好調に推移しました。10月は立て続けに台風が発生したことから防災品の買い溜めがあり、既存店売上高は18.0%増となりました。
ツルハホールディングス(3391)(15日締め企業のため、10月度の集計期間は9月16日から10月15日)は増税の影響により雑貨や単価の高い化粧品が好調に推移し14.4%増となりました。
ランク外となりましたが、「その他」のあさひ(3333)(20日締め企業のため、10月度の集計期間は9月21日から10月20日)が26.9%増と全銘柄中第1位と大きく伸長しました。消費増税前の駆け込み需要により、単価が高い電動アシスト付き自転車が好調に推移したことにから、客単価が18.7%増と大きく伸長し売上を押し上げました。
一方、家電量販店では、消費増税前の駆け込み需要の影響を受け、コジマ(7513)19.6%減、ビッグカメラ(3048)19.1%減と大きく減少したものの、ゲームの人気シリーズの新作ソフトが好調に推移したことに加え、度重なる台風の上陸による防災意識の高まりから、乾電池などの防災関連用品が好調に推移したため、駆け込みによる9月の大幅増収に対し、影響は軽微でした。
百貨店では、消費増税前の駆け込み需要増の反動及び台風19号の上陸による店舗の営業時間短縮や臨時休業に伴い、三越伊勢丹ホールディングス(3099)20.0%減、そごう・西武(3382)19.4%減、J.フロントリテイリング(3086)19.1%減、と丸井(8252)(8.4%減)を除く各社が既存店前年比2ケタ減となりました。
アパレル専門店では、月の初旬が昨年に比べ暖かかったことから、重衣料など秋冬物の初動が鈍かったことに加え、消費増税前の駆け込み需要の反動が見られました。その結果、青山商事(8219)27.9%減、AOKIホールディングス(8214)26.6%減、はるやまホールディングス(7416)17.2%減と各社2ケタ減となりました。
「3-12」トップスリー:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが浮上・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
京都きもの友禅(7615)、ケーヨー(8168)、モスフードサービス(8153)
3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
あさひ(3333)、ハブ(3030)、やまや(9994)
既存店客数および客単価の推移:
10月の客数及び客単価は、それぞれ5.1%減、1.3%増となりました。消費増税前の駆け込み需要増の反動に加え、台風19号の上陸によって記録的な暴風雨に見舞われたことや、交通機関の計画運休が実施されたことなどが消費者心理に影響を及ぼし、外出を控える人が多くなったことから、客数に大きな影響を及ぼしました。一方、台風の上陸に伴う買い溜めを受け、ドラッグストア、コンビニエンスストアの客単価がそれぞれ4.3%増、4.2%増と大きく伸長し、サブセクター全体の客単価は前年同月に比べ対しプラスに伸長しました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem