小売業月次売上高レポートvol.20
11月は増税による影響が弱まり、客数減が縮小
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業211社の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
22サブセクターのうち、プラスは7サブセクター:
11月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比0.8%減、うち、純小売りは1.8%減、外食は1.2%増となりました。プラスのサブセクターは7サブセクターとなりました。
10月に比べ、駆け込み需要の反動減は落ち着いてきたものの、家具・家電や宝飾品などの高単価品を取り扱うサブセクターでは、依然、反動減が見られるところもありました。他方、日本でも定着しつつある、ブラックフライデー(11月29日)では、一部GMSやSC内に出店するアパレル専門店などがセールを実施し、売上への寄与が見られました。
11月は最低気温が前年を下回る日が見られた一方で、東京では、20℃を超える日が9日間もあるなど、消費者の冬物衣料の購入に対するモチベーションが高まり切らず、百貨店の衣料品やアパレル専門店の売上は低調でした。
曜日周りは、前年同月に対し土日祝日が1日多い月となりました。
11月度データ集計企業数は、211社(純小売り145社、外食66社)でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、通販(10.7%増)、回転寿司(3.7%増)、ファストフード(1.8%増)。下位3サブセクターは、家具・ライフスタイル専門店(12.6%減)、百貨店(6.0%減)、身のまわり品専門店(4.1%減)でした。
通販では、TVショッピングのプライムダイレクトなどを運営するアイケイ(2722)が、温熱ベストの「スピードヒート」や多変型ハシゴ「ステップエイト」など、昨年好評だった商品の在庫を拡充。同商品のTVショッピングでの放送時間を拡大し、視聴率の高い時間帯に放映したところ、販売が好調に推移し37.6%増と全銘柄の中でも第1位の伸び率となりました。
家具などを中心に取り扱う通販サイト「リコメン堂」を運営するジェネレーションパス(3195)はPayPayが11月1日より実施する、購入金額の最大20%相当が還元される「100億円相当あげちゃうキャンペーン」が寄与し、暖房器具などの家電を中心に販売が伸長したことから9.3%増となりました。
回転寿司では、スシローを展開するスシローグローバルHD(3563)は消費増税後の消費意欲減退への対応策として、10月から12月にかけて、多くの商品キャンペーンを企画しました。11月は期間限定商品や3ヶ月で175万杯販売したタピオカドリンク企画の第二弾の「光るゴールデンタピオカ黒糖ミルク」の販売などに加え、11月から始まった家庭で簡単にいくらやウニなどスシローの厳選素材を楽しめる「スシロー市場」や、年末年始に向けた持ち帰りお寿司といったテイクアウト商品などが好調に推移し、10.0%増と伸長しました。
カッパ寿司を運営するカッパクリエイト(7421)は強化しているサイドメニューや人気のタピオカドリンクなどのデザートが好調に推移した他、消費増税以降、軽減税率対象の単価の高いテイクアウト商品の売上が伸長し、既存店売上高は5.2%増となりました。
元気寿司(9828)は、回転しない回転寿司業態の拡大に伴い、鮮度の高い寿司を食べたい需要の獲得が好調に進み、客数が牽引する形で既存店売上高は3.4%増となりました。
ファストフードでは、日本KFCホールディングス(9873)が17.6%増と全銘柄中第2位となり、サブセクター全体を押し上げました。
モスフードサービス(8153)は、「MOSJAPAN PRIDE」企画第二弾の、ヒグチユウコオリジナルキャラクター「ギュスターヴくん」とのコラボ商品が、新規顧客の獲得や客単価の上昇に寄与しました。また、Uber Eats導入店舗の売上が好調に推移し、客単価が上昇したことなどから、既存店売上高は12.6%増と大きく伸長いたしました。
吉野家ホールディングス(9861)は離反顧客の呼び戻しに向け、牛肉の商品力の高さをアピールする販促施策などの実施や、同社が掲げる「コア&モア戦略」に基づき、「メガサイズ牛丼」や「ライザップ牛サラダ」など、特定のターゲットに向けた商品展開と、新規顧客の獲得に向けた「テイクアウト10%オフ企画」など各種施策を計画的に実施し、これまで着実に客数を拡大してきましたが、11月においては新商品のすき焼き鍋膳が奏功したこともあり7.3%増となりました。
下位セブセクターの、「家具・ライフスタイル型専門店」、「百貨店」、「身のまわり品専門店」では10月に比べ駆け込み需要の反動は弱まってきたものの、引き続き高単価品を中心に売上が伸び悩み、各社苦戦しています。
「3-12」トップスリー:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが浮上・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
アイケイ(2722)、モスフードサービス(8153)、ハブ(3030)
3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
アイケイ(2722)、テイツー(7610)、くら寿司(2695)
既存店客数および客単価の推移:
11月の客数及び客単価は、それぞれ1.2%減、0.9%増となりました。前年に比べ土曜日が1日多かったことに加え、増税前の駆け込み需要増後の反動が落ち着き、客数減は前月に比べ弱まりました。客単価は、客数減をカバーする形で伸長する傾向が続いています。特に、外食のサブセクターでは客単価の上昇が顕著に見られ、各社メニューの見直しなどを実施しているほか、伸び率の高い回転寿司では、軽減税率によるテイクアウト需要が高まり、高単価な持ち帰り商品の販売が伸長するところなども見られました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem