月次報告

小売業月次売上高レポートvol.21

12月は記録的暖冬で季節商材が低調

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業211社の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。

22サブセクターのうち、プラスは4サブセクター:

12月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比2.6%減、うち、純小売りは3.4%減、外食は0.8%減となりました。プラスのサブセクターは4サブセクターとなり、直近1年では消費増税前の駆け込み需要の反動を受けた10月、記録的な豪雨に見舞われた7月に続く低調な月となりました。

12月は休日が前年に比べ2日少なかったことに加え、記録的な暖冬と小雪となり、冬物衣料やウィンタースポーツ用品、暖房器具などの季節商材を取り扱う企業を中心に大きなマイナス影響がありました。

月初は最低気温が前年を下回る日が続き、東北及び日本海側では積雪なども観測されました。一方、中旬以降は冬型の気圧配置が続かず、寒気の南下が弱かったため、北日本及び西日本海側では1961年の統計開始以降最も積雪が少なく、また東日本海側でも2015年に続く小雪となりました。月初の気温の低下もあり、冬物衣料などに動きが見られる企業もありましたが、月を通じて暖かい日が続き、カイロや暖房器具、除雪用品など冬物関連商材は総じて低調でした。曜日回りは、前年同月に対し土日祝日が2日少ない月となりました。
12月度データ集計企業数は、211社(純小売り144社、外食67社)でした。

サブセクター別伸び率:

上位3サブセクターは、通販(13.5%増)、ファストフード(1.1%増)、コンビニエンスストア(0.3%増)。下位3サブセクターは、家電量販店(19.1%減)家具・ライフスタイル型専門店(9.6%減)、身回り品専門店(8.3%減)でした。

通販では、TVショッピングのプライムダイレクトなどを運営するアイケイ(2722)が39.2%増と全銘柄中第1位、家具などを中心に取り扱う通販サイト「リコメン堂」を運営するジェネレーションパス(3195)が15.7%増と全銘柄中第3位と、共に好調に推移しました。

一方、家電量販店では、駆け込み需要の反動は薄れてきたものの、前年同月に「PayPay」が実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」の高ハードルによる反動減があったほか、暖冬の影響で季節商材が低調に推移しました。加えて、 前年に、通信事業者の料金プラン変更に伴う端末代金の大幅な値下げがなくなることを懸念し、携帯電話の駆け込み需要が発生していた反動で、携帯電話の売上高が コジマ(7513)で36.1%減、ビックカメラ(3048)で24.0%減となるなど、各社大きく落ち込みました。以上のことから、ビックカメラ(3048)は25.0%減と全銘柄中最下位となり、コジマ(7513)も13.2%減となるなど、低調な推移となりました。

家具・ライフスタイル型専門店は、大塚家具(8186)が24.2%減と3ヶ月連続の2ケタ減、HAPiNS(7577)がパジャマやブランケットなど冬物衣料が振るわず、16.7%減と4ヶ月連続で2ケタ減となるなど、低調でした。
ニトリHD(9843)は、駆け込み需要の反動減で家具などが低調だったほか、暖冬の影響によりNウォームシリーズや小型暖房器具、こたつなどの季節商材が想定よりも動きが鈍く、7.3%減となりました。

身回り品専門店では、4℃ホールディングス(8008)が、駆け込み需要の反動減が続いていることや、クリスマスイブ前日の23日が祝日ではなくなったことがジュエリーの販売に影響し、16.6%減となりました。
シュープラザや東京靴流通センターを展開するチヨダ(8185)は、記録的な暖冬と小雪からブーツなどの季節商材が低調に推移し、10.1%減となりました。

ランク外となりましたが、下位サブセクター第4位のアパレル専門店でも、各社冬物衣料が振るわず、集計しているアパレル専門店23社中20社がマイナスとなりました。個別銘柄では、ライトオン(7445)が20.1%減、青山商事(8219)が16.9%減、ジーンズメイト(7448)が13.3%減となるなどし、サブセクター全体を大きく押し下げました。

「3-12」トップスリー:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが浮上・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。

3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):

アイケイ(2722)、モスフードサービス(8153)、コックス(9876)

3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):

アイケイ(2722)、ワークマン(7564)、アークランドサービス(3085)

既存店客数および客単価の推移:

12月の客数及び客単価は、それぞれ2.6%減、0.4%増となりました。
前年に比べ休日が2日少なかったことに加え、暖冬の影響が続き季節商材が低調に推移しました。また、記録的な小雪の影響からウィンタースポーツへの客足が遠のき、スポーツ専門店もスキーやスノボーなどのウィンタースポーツ関連商材が低調となりました。客単価は、客数減をカバーする形で伸長する傾向が続いています。特に、外食のサブセクターでは客単価の上昇が顕著に見られ、各社メニューの見直しなどを実施しているほか、伸び率の高い回転寿司では、軽減税率によるテイクアウト需要が高まり、高単価な持ち帰り商品の販売が伸長するところなども見られました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem
News一覧へ