小売業月次売上高レポートvol.22
1月は暖冬の影響が続くも、駆込みの反動は弱まる
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業213社の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
22サブセクターのうち、プラスは10サブセクター:
1月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比0.4%減、うち、純小売りは1.4%減、外食は1.7%増となりました。プラスのサブセクターは10サブセクターとなりました。
1月は、前年に比べ平日の金曜日が1日多く、新年会などの宴会利用が増え居酒屋などが伸長したほか、暖冬の影響から外出意欲が高まったことなどもあり、直近一年では「外食」が一番伸長した月となりました。また、駆け込み需要の反動を大きく受けた、家電量販店や百貨店などの一部企業では、既存店売上高のマイナス幅が大きく縮小するところや、プラスに転じるところが見られました。一方、アパレル専門店やスポーツ専門店では、続く暖冬と小雪の影響から、冬物衣料やウィンタースポーツ用品などの季節商材が低調に推移しました。今年は春節が1月25日に月ずれしたことで(前年は2月5日)、インバウンドの伸長も一時見られましたが、下旬からのコロナウィルスの流行により、国内外の客足が遠のいたことで、百貨店などは苦戦を強いられました。
1月は、寒気の南下が全国的に弱く、東・西日本は1946年の統計開始以降1位の高温を記録しました。また、冬型の気圧配置が続かず、日本海側を中心に1961年の統計開始以降最も雪の少ない1月となりました。また、平均最低気温は前年を2.3℃上回りました。曜日回りは、前年同月に対し土日祝日は同数でしたが、平日の金曜日が1日多い月となりました。
1月度データ集計企業数は、213社(純小売り146社、外食67社)でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、通販(10.4%増)、メガネ専門店(4.9%増)、回転寿司(4.4%増)。下位3サブセクターは、家具・ライフスタイル型専門店(7.9%減)、スポーツ専門店(5.8%減)、アパレル専門店(4.7%減)でした。
通販では、TVショッピングの「プライムダイレクト」などを運営するアイケイ(2722)が32.7%増と全銘柄中第1位、家具などを中心に取り扱う通販サイト「リコメン堂」を運営するジェネレーションパス(3195)が15.0%増と全銘柄中第3位と、両社共に2ヶ月連続2ケタ増と好調に推移し、サブセクター全体を押し上げました。
メガネ専門店では、ジンズホールディングス(3046)が「ドラえもん」とのコラボレーションモデル「JINSドラえもんモデル」が想定を上回る売れ行きとなったことや、前年も好評だった福袋の在庫を拡充し好調に推移したことから11.7%増と大きく伸長しました。
三城ホールディングス(7455)では、暖冬の影響により郊外店を中心に客足が伸び、サングラスなどの商品が好調だったことや、今期から強化している検眼サービスの提案が高機能レンズなど高単価な商品の購入につながり、6.3%増となりました。ビジョナリーホールディングス(9263)は、次世代店舗のアイケアサービスによるメガネの提案が、客単価を引き上げたほか、コンタクト定期便のコンビニ受取サービスや、様々な決済手段への対応など、顧客利便性の高いサービスが好評を博し、4.5%増となりました。
回転寿司では、スシローグローバルホールディングス(3563)が7.0%増となり、既存店売上高は27ヶ月連続で伸長しました。「魚べい」を運営する元気寿司(9828)はマグロを使ったフェアメニューが客単価を押し上げたほか、12月に好評だった「Sushica1周年企画キャンペーン(5,000円以上チャージで10%ポイント付与)」のポイントの戻りが売上に寄与し6.9%増と伸長しました。「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト(7421)は、東北・北陸に出店が多いため、暖冬の影響で客足が伸びたことに加え、タピオカドリンクやラーメンなど単価の高いサイドメニューが客単価を押し上げ4.8%増となりました。
家具・ライフスタイル型専門店では、各社暖冬などの影響を受け、季節商材が振るわずHAPiNS(7577)が17.7%減、大塚家具(8186)が7.2%減、ニトリホールディングス(9843)が2.9%減となりました。また、良品計画(7453)は年始から下旬にかけてシステムトラブルが発生し、家具やファブリックなど一部大型商品の販売に影響があり3.9%減と、各社前年を割り込みました。
スポーツ専門店では、暖冬の影響からウィンタースポーツ商品などが低調に推移し、ゼビオ(8281)が12.4%減、ゴルフ・ドゥ(3032)が5.0%減、ヒマラヤ(7514)が4.6%減、アルペン(3028)が1.2%減と各社前年割れとなりました。
アパレル専門店は、各社クリアランスセールを実施し、在庫消化を進めたものの、暖冬の影響から消化が進まず苦戦を強いられ、24社中19社がマイナスとなりました。
特に、青山商事(8219)17.7%減、オンワードホールディングス(8016)12.0%減、ライトオン(7445)11.9%減等が大幅減を記録しました。
「3-12」トップスリー:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
アイケイ(2722)、コックス(9876)、モスフードサービス(8153)
3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
アイケイ(2722)、幸楽苑HD(7554)、AOKIホールディングス(8214)
既存店客数および客単価の推移:
1月の客数及び客単価は、それぞれ0.9%減、0.8%増となりました。
続く暖冬の影響からアパレル専門店やスポーツ専門店は客足が遠のき低調に推移しましたが、消費増税の駆け込み需要の反動が弱まり、全体のマイナス幅は縮小傾向となりました。外食のサブセクターでは、金曜日が1日多かったことによる宴会需要の高まりに加え、各社メニューの見直しなどの実施を行い客単価の上昇が見られました。伸び率の高い回転寿司では、軽減税率によるテイクアウト需要が高まり、高単価な持ち帰り商品の販売が伸長するなどの傾向が見られました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem