小売業月次売上高レポートvol.23
2月は閏日と祝日増、新型コロナ特需で好調に推移
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業209社の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
22サブセクターのうち、プラスは17サブセクター:
2月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比2.4%増、うち、純小売りは2.8%増、外食は1.5%増となりました。プラスのサブセクターは17サブセクターとなりました。
2月は、閏年で営業日が1日増えたことに加えて、祝日と土曜日が前年より多く、休日が2日増となったことで、客数増が牽引し、売上増となりました。また、新型コロナウィルスの流行により、一部小売業では、マスクやトイレットペーパーなどの日用品で特需が発生し、大幅な売上伸長が見られました。一方、百貨店などのインバウンド寄与の高い業態では、訪日外国人客数が前年同月比58.3%減と大幅に減少する中、免税商品売上を大きく落としました。加えて、20日に、政府より人が集まる場所などへの不要不急の外出を控える要請があったことを受けて、居酒屋業態などでは、宴会予約のキャンセルに見舞われるなど、大きな影響を受けました。
2月は、冬型の気圧配置となる日が少なく、東日本を中心に全国的に暖かい日が続きました。東京では、最低気温が5℃を超える日が12日もあり、政府からの外出自粛要請が出るまでは、外出する人も多く、アパレル専門店などでは中・軽衣料が好調に推移しました。
曜日回りは、閏日1日増に加え、前年同月比土日祝日が2日増となりました。
2月度データ集計企業数は、209社(純小売り143社、外食66社)でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、ドラッグストア(13.0%増)、ディスカウントストア/100円ショップ(11.8%増)、回転寿司(8.7%増)。下位3サブセクターは、百貨店(13.4%減)、家具・ライフスタイル型専門店(4.5%減)、身回り品専門店(2.8%減)でした。
ドラッグストアでは、新型コロナウィルスの流行に伴い、マスクをはじめとした衛生用品や除菌関連商材などが、前年の2倍以上の売れ行きになるところなどもあるなど、特需により大幅伸長しました。中旬頃に発表された政府から休校要請以降は、家庭でのインスタント食品への需要増や、トイレットペーパーなどの買い占めが発生するなどし、スギホールディングス(7649)が20.9%増と全銘柄中第4位、ウエルシアホールディングス(3141)が20.6%増と全銘柄中第5位、クリエイトSDホールディングス(3148)、19.8%増、薬王堂ホールディングス(7679)が19.6%増などと、ドラッグストア全社でプラスに進捗しました。
ディスカウントストア/100円ショップでは、ジェーソン(3080)が、新型コロナウィルスの流行に備え、マスク在庫を潤沢に準備していたことや、低価格飲料や日用品などが好調に推移し、24.2%増と全銘柄中第2位と大きく伸長しました。ワッツ(2735)でも、マスクなどの衛生用品やトイレットペーパーなどの紙製品が大きく伸長し17.0%増となりました。Mr Max(8203)は、マスクやアルコールスプレー、ハンドソープなどの衛生用品が前年に比べ2倍以上売れたことや、空気清浄機が好調で、13.4%増と大きく伸長しました。
回転寿司では、カレンダー回りの恩恵で各社客数が大きく伸長しました。くら寿司(2695)は、2019年3月から始めた200円皿の「旬の極みシリーズ」や、月替わりで展開する「クラロワイヤル」シリーズのチーズ専門店PABLOとのコラボレーション商品が好調に推移し客単価を押し上げた結果、既存店売上高は12.1%増と大きく伸長しました。価格戦略と販促施策が奏功しているスシローグローバルHD(3563)は12.0%増となりました。元気寿司(9828)は、2月から期間限定で発売した人気のまぐろ商品が好調に推移し、10.0%増となりました。
また、直近1年では相対的に弱めの売上傾向が続いたスーパーやホームセンターでも、新型コロナウィルスの特需を受け、それぞれ、サブセクター上位第5位、第6位となりました。
百貨店では、前年は2月にあった春節が1月となった反動減に加え、新型コロナウィルスの流行から、訪日外国人客の多くを占める中国の訪日客数が前年同月比87.9%減となるなど、海外の団体ツアーなどのキャンセルが相次ぎ、大きなマイナスとなりました。各社免税品を中心に売上が苦戦し、パルコ(8251)が0.2%減、丸井グループ(8252)が3.3%減、そごう・西武(セブン&アイ・ホールディングス)(3382)が6.5%減、高島屋(8233)が12.3%減、三越伊勢丹ホールディングス(3099)が14.3%減、H2Oリテイリング(8242)が14.3%減、J.フロントリテイリング(3086)が21.9%減、松屋(8237)が31.5%減、と全社でマイナスとなりました。
「3-12」トップスリー:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
アイケイ(2722)、ゴルフ・ドゥ(3032)、アークランドサービス(3085)
3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
ゴルフ・ドゥ(3032)、大塚家具(8186)、ジェーソン(3080)
既存店客数および客単価の推移:
2月の客数及び客単価は、それぞれ2.5%増、0.7%増となりました。
休日と営業日の増加に加え、続く暖冬の影響から外出が増えたことや、ドラッグストアなど日用品を取り扱う店で衛生用品の特需があり、客数は直近1年では一番高い伸び率となりました。一方、不要不急の外出を控える要請が政府から発表された最終週以降は、客足が遠のき、各社厳しい推移となりました。客単価は、伸長傾向が続いています。特に、外食のサブセクターでは、各社メニューの見直しなどに加え、特に伸び率の高い回転寿司では、単価の高いサイドメニューの強化や軽減税率によるテイクアウト需要が高まり、高単価な持ち帰り商品の販売が伸長する傾向が見られています。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem