月次報告

小売業月次売上高レポートvol.24

3月は新型コロナによる外出自粛で客数が大幅減

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業210社の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。

22サブセクターのうち、プラスは5サブセクター:

3月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比14.3%減、うち、純小売りは9.6%減、外食は24.5%減となりました。プラスのサブセクターは5サブセクターとなりました。
3月は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、政府から外出自粛要請が発令されたことから、テレワークなどを実施する企業や各教育機関で休園、休校が相次ぐなど、不要不急の外出や外食を控える動きが多く見られました。また、訪日外国人客数は前年同月比93.0%減と、東日本大震災の起きた翌月2011年4月(同62.5%減)を超える下げ幅となり、1964年の統計開始以来過去最大となりました。さらに国内では、都内を中心に百貨店などの大型商業施設や居酒屋などの飲食店が臨時休業や営業時間の短縮を実施するなど、人との接触を抑制する措置を取る動きが見られ、多くの小売・外食のサブセクターで苦戦を強いられました。
一方、不要不急の外出を避ける動きが活発化したことで、通信販売やデリバリーなどの需要が高まり、アパレルなどではEコマースの売上が2桁増になるところなどが多く見られました。外食でもテイクアウトやドライブスルーを利用する人が増加したほか、デリバリーの売上伸長も各社で見られました。

3月は、南から温暖な空気が流れ込みやすく、全国的に暖かい日が続きました。一方、週末の29日は南岸低気圧の影響で東日本に寒気が流れ込み、一部大雪となるところがありました。
曜日回りは、前年同月に比べ休日が1日減となりました。
3月度データ集計企業数は、210社(純小売り144社、外食66社)でした。

サブセクター別伸び率:

上位3サブセクターは、通販(8.5%増)、ドラッグストア(6.8%増)、スーパー(5.5%増)。下位3サブセクターは、居酒屋(37.0%減)、百貨店(36.7%減)、身回り品専門店(30.7%減)でした。

上位3サブセクターのうち、通販では、外出が制限されたことを受けて、通信販売の利用が増え、好調に推移しました。

ドラッグストアでは、マスクなどを中心とした衛生用品やトイレットペーパーなどの紙製品が引き続き好調だったほか、食料品のまとめ買い需要が高まり、食品の取扱構成比が高い銘柄が好調に推移しました。Genky DrugStores(9267)は全体の売上の6割を占める食品が好調に推移し22.0%増と全銘柄中第3位となりました。クスリのアオキホールディングス(3398)は、衛生用品や紙製品が好調に推移したほか、巣ごもり需要の高まりから食品が好調に推移し17.2%増と好調に推移しました。ツルハホールディングス(3391)は食品売上が2割伸長、冷凍食品やカップ麺などが好調に推移し14.5%増と伸長しました。一方、マツモトキヨシホールディングス(3088)やココカラファイン(3098)はインバウンド向けの都市型出店が多く、訪日外国人の減少による免税売上の減少が影響し、それぞれ10.6%減、6.9%減とマイナスとなりました。

スーパーでは、マスクなどの衛生用品が好調に推移したほか、政府の「ロックダウン」を示唆する発言を受けて、米やパスタ、インスタント食品などの長期保存が可能な食料品や生鮮食品のまとめ買い需要が高まり、客単価が大きく伸長した結果、20社中17社がプラスに伸長しました。一方、都心の駅ビルなどの商業施設を中心に出店している魚力(7596)などでは、商業施設の営業時間の短縮や休業、さらに、外出自粛要請による仕事帰りの買い物客などの減少によって、客数が9.9%減と大きく低迷し、既存店前年比は10.1%減となりました。

なお、個別企業では、藤久(9966)が全銘柄トップで、既存店売上高は46.1%増と大きく伸長しました。これは、マスクの相次ぐ欠品から手作りマスク需要が高まり、生地が80%増、ミシン、針などの道具類が40%増と、縫製関連品が大きく伸長したことによります。

下位3サブセクターのうち、居酒屋では、政府からの宴会自粛要請を受けて、比較的大人数の収容が可能な居酒屋業態において宴会の利用が減少するなど、大幅な客数減が見られました。また、訪日外国人客数の減少も、インバウンド利用が高いパプやレストラン業態では大幅な客数減につながったほか、自主的に営業時間の短縮や休業を実施するところなどもあり、同サブセクターの売上高は、全銘柄2
ケタ減となりました。

百貨店では、免税品の売上が各百貨店90%超のマイナスとなったほか、3月末からの外出自粛要請に伴い、最終週の週末に各社臨時休業などを行った結果、売上高は、全銘柄3割以上減と大きく苦戦しました。

「3-12」トップスリー:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。

3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):

藤久(9966)、アイケイ(2722)、西松屋チェーン(7545)

3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):

藤久(9966)、あさひ(3333)、テイツー(7610)

既存店客数および客単価の推移:

3月の客数及び客単価は、それぞれ14.7%減、0.4%減となりました。3月は、新型コロナウイルス感染症の拡大から、消費者側と企業側の双方が不要不急の外出を控える動きがあり、客数は、2000年1月の弊社調査開始以来最大の下げ幅となりました。客単価は、マスクの着用やテレワークの実施などにより、比較的単価の高い化粧品類の需要が下がり、ドラッグストアなどでは客単価が低調に推移しました。一方、スーパーなどでは、少ない来店で済むよう、まとめ買いをする人が多く見られたほか、一部外食では、休校やテレワークの実施により、家族客の利用が増えたことから、客単価の伸長が見られました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem
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