月次報告

小売業月次売上高レポートvol.26

5月は前月に比べ改善も、依然、売上は厳しい状況

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。

22サブセクターのうち、プラスは6サブセクター:

5月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比22.4%減、うち、純小売りは15.3%減、外食は40.0%減となりました。プラスのサブセクターは6サブセクターとなりました。
5月は、業種特性や、休業店舗の比率、店舗立地によってサブセクター間、企業間で幅広い売上差異が発生しました。また、14日以降、緊急事態宣言が段階的に解除されたものの、大型商業施設や3密が懸念される業態では、多くの店舗が休業や営業時間短縮が続いたため、百貨店、居酒屋、アパレルなどが特に厳しい推移となりました。加えて、訪日外国人客数は1,700人(前年同月比99.9%減)と1964年の統計開始以来過去最少となるなど、インバウンド需要も大きく減退しました。
一方、続く巣ごもりや、衛生用品の需要増に伴い、スーパーやドラッグストアなどの生活インフラに直結するサブセクターは好調に推移しました。
また、長引く外出自粛や企業のテレワーク導入に伴い、より快適な室内環境を求める人が増えたことから、家電やDIY・園芸用品、ホームオフィス用品を取り扱う企業も好調に推移しました。非接触購買も好調に推移し、通信販売が堅調だったほか、外食では、売上は全体的に厳しかったものの、非店内飲食(宅配、テイクアウト、ドライブスルーなど)の売上比率の高まりが見られました。

5月は、一部地域で大雨に見舞われるところもありましたが、上旬から中旬にかけては全国的に高気圧に覆われるところが多く、太平洋側を中心に晴れ間が多く見られました。月の後半は、オホーツク海高気圧からの冷たく湿った気流の影響で、寒気を伴った低気圧の影響を受けやすく、曇りの日が多くなりましたが、下旬には南から暖かい空気に覆われ北・東日本は暖かい気候となり、夏物衣料や接触冷感素材のアイテムなど季節商材が好調に推移しました。九州南部では5月30日ごろ、四国地方では5月31日に、前年よりも早い梅雨入りが観測されました。
曜日回りは、前年同月に比べ休日が1日増となりました。
5月度データ集計企業数は、201社(純小売り143社、外食58社)でした。
通常、弊社では、約210社を掲載しておりますが、5月度は、営業自粛に伴い、開示中止や遅延が多く見られたことから、通常月より少ない集計企業数となりました。

サブセクター別伸び率:

上位3サブセクターは、通販(14.0%増)、ホームセンター(10.4%増)、スーパー(10.2%増)。下位3サブセクターは、百貨店(74.8%減)、居酒屋(69.5%減)、ファミリーレストラン(46.5%減)でした。
通販では、外出自粛に伴い非接触購買の需要が拡大していることから、ジェネレーションパス(3195)が53.1%増、アイケイ(2722)が14.6%増、MonotaRO(3064)が10.4%増と各社好調に推移しました。

ホームセンターでは、自宅で過ごす時間が増えたことで、今まで時間がなくて手を付けられなかった家の修繕や室内環境の整備などを行う人が増えたことで、木材や塗料などを中心としたDIY用品や園芸用品などが好調に推移しました。コーナン商事(7516)は21.9%増と全銘柄中でも第8位と好調に推移しました。アークランドサカモト(9842)は外出自粛で高まった自家需要を受け、DIYや園芸関連商材が好調に推移し21.1%増と大きく伸長しました。ケーヨー(8168)はDIYや園芸用品が全体を大きく押し上げたほか、室内用のトレーニング用品なども好調に推移し20.2%増となりました。

スーパーでは、続く巣ごもり需要から、生鮮食品を中心としたまとめ買いが拡大し、同サブセクター平均客単価が16.4%増となるなど、売上増を牽引しました。特に、企業のテレワーク実施により、郊外の自宅で在宅勤務をする人が増えたことから、郊外エリアの消費が高まり、ベッドタウン立地の多いヤオコー(8279)、ベルク(9974)、いなげや(8182)が、それぞれ19.4%増、18.8%増、15.8%増と好調に推移しました。

百貨店では、緊急事態宣言解除まで、多くの企業が全店休業を実施しており、一部百貨店では食料品売場は営業していたものの、各社5割以上の減収と苦戦することとなりました。

3密が懸念される居酒屋やファミリーレストランは、都心部を中心に、依然、臨時休業や時短営業を実施するところが多く、両サブセクター内26社中24社が3割以上の減収と低調に推移しました。一方、テイクアウト用のメニューが充実し、サービスの認知も高い王将フードサービス(9936)は、テイクアウトの売上が前年同月比223%と大きく伸長したことで、既存店売上高は11.8%減と同業他社マイナス幅が軽微にとどまりました。

また、ランク外とはなりましたが、下位サブセクター第4位のアパレル専門店では、大型商業施設の営業自粛に伴い休業する店舗が多く、半数以上の銘柄が4割以上減と、低調に推移しました。一方で、ファーストリテイリング(9983)、しまむら(8227)、マックハウス(7603)などのロードサイド立地の多いカジュアル専門店はそれぞれ18.1%減、23.4%減、24.1%減と比較的堅調に推移しました。

「3-12」トップスリー:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。

3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):

藤久(9966)、テイツー(7610)、ジェネレーションパス(3195)

3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):

テイツー(7610)、ジェネレーションパス(3195)、日本KFC HD(9873)

既存店客数および客単価の推移:

5月の客数及び客単価は、それぞれ27.4%減、4.3%増となりました。5月は、緊急事態宣言の解除に伴い、営業再開する小売店舖が増えたことや、消費者の外出が増えたことから、客数は前月に対し8.1ポイント増となりましたが、厳しい状況が続きました。客単価は、スーパーなどを中心に、来店頻度を減らすためにまとめ買いをする人が多く見られたほか、一部外食では、休校やテレワークの実施により、家族客の利用が増えたことから、客単価の伸長が見られました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem
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