小売業月次売上高レポートvol.27
6月は、外食は依然厳しいが、家中消費は活発化
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
22サブセクターのうち、プラスは12サブセクター:
6月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比5.7%減、うち、純小売りは2.6%増、外食は25.8%減となりました。プラスのサブセクターは12サブセクターとなりました。また、前月に対して2ケタ以上伸長したサブセクターは13となりました。
6月は、緊急事態宣言解除に伴い、通常営業に戻る店舗が多く見られたことに加え、「特別定額給付金」の給付拡大により消費が活発になり、好調に推移するところが多く見られました。また、初旬にかけて気温が昨年よりも高く推移したことから、エアコンや接触冷感アイテムなどの季節商材や夏物衣料が好調に推移しました。一時より落ち着きは見せたものの、テレワークや外出自粛の継続に伴い、ホームオフィス関連商材やDIY・園芸用品、省エネ・調理家電などが好調に推移しました。一方、3密を敬遠する傾向は、消費者の間で依然強く、居酒屋やファミリーレストランなどの外食業態は、前月に対して客数は大きく改善したものの、前年対比では多くの企業が苦戦を強いられました。また、訪日外国人数は2,600人(前年同月比99.9%減)と低い水準となり、インバウンド需要は引き続き低調に推移しました。
6月は、高気圧に覆われ暖かい空気が流れ込みやすかったことや、日差しが強かったことから、全国的に気温が高く、最高気温は前年を10℃以上超える日が4日もありました。また、東日本では1961年の統計開始以降、6月上旬としては一番気温が高い年となりました。一方、中旬頃からは、梅雨前線が本州付近に停滞しやすく、本州各地で梅雨入りが観測され、一部地域では大雨となるところも見られました。月を通しては30℃を超える日が7日もあるなど、前年に比べて気温の高い日が多く、夏物衣料などの季節商材が好調に推移しました。
曜日回りは、前年同月に比べ休日が2日減となりました。
6月度データ集計企業数は、205社(純小売り145社、外食60社)でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、通販(31.2%増)、家具・ライフスタイル型専門店(20.3%増)、ホームセンター(16.0%増)。下位3サブセクターは、居酒屋(45.1%減)、ファミリーレストラン(25.8%減)、百貨店(22.1%減)でした。
通販では、ジェネレーションパス(3195)が77.7%増と全銘柄中第2位となり、好調に推移しました。MonotaRO(3064)は、工場の稼働停止や工事現場の作業中止などにより低調だった法人からの受注が、緊急事態宣言の解除以降回復してきたことにより、31.1%増と伸長しました。
家具・ライフスタイル専門店では、ニトリホールディングス(9843)がテレワークの継続に伴い、ホームオフィス関連や収納などが好調に推移しました。加えて、気温の上昇から接触冷感などの季節商材も大きく伸長し47.4%増と、全銘柄中3位となりました。
良品計画(7453)は、巣ごもり需要の高まりから、カレーなどのレトルト食品が好調に推移し、食品部門が27.7%増と、全体を大きく牽引したほか、生活雑貨ではキッチン用品や収納用品が好調に推移し、既存店売上高は5.8%増と伸長しました。
ホームセンターでは、ケーヨー(8168)が、気温の上昇に伴い、季節商材が好調に推移する中、特別定額給付金の給付拡大の恩恵もあり、エアコンなどの高単価な季節家電に特に伸長が見られました。また、緊急事態宣言解除後、店舗再開の準備に向けたDIYや園芸用品の法人需要が高まり、20.9%増と大きく伸長しました。
また、個別銘柄上位第1位の藤久(9966)は、マスクの需要増に加え、室内で過ごす時間が増えたことによる、手芸全体の需要の高まりから、生地類やミシン・針などの道具類の売上が前年同月に比べ2倍以上伸長しました。また、毎年実施している5月のセールが6月にずれ込んだこともあり、既存店売上高は86.1%増と大きく伸長しました。
個別銘柄第4位のあさひ(3333)では、学校の再開に伴い、3-4月の需要期に落ち込んだ通学用自転車の売上が大きく伸長したほか、公共交通機関の利用を避ける人が増えたことによる、自転車通勤の需要増を受け、折り畳み自転車なども好調に推移し40.5%増となりました。
個別銘柄第6位のコジマ(7513)では、特別定額給付金の給付拡大で高単価な家電が好調に推移しました。中でも、テレワークや巣ごもり需要の高まりから、TVや白物家電が大きく伸長したほか、気温・湿度の上昇に伴いエアコンや除湿器なども好調に推移し35.9%増となりました。また、チャネル別では実店舗の売上が前年に対し約30%増だったのに対しECは約60%増となり、ECの売上拡大が顕著にみられました。
「3-12」トップスリー:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
藤久(9966)、ジェネレーションパス(3195)、アークランドサカモト(9842)
3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
レナウン(3606)、サックスバーHD(9990)、ファーストリテイリング(9983)
既存店客数および客単価の推移:
6月の客数及び客単価は、それぞれ11.9%減、3.1%増となりました。6月は続く新型コロナウィルス感染の懸念から、外食を避ける人が多く、客数は低調に推移しました。客単価は、スーパーなどを中心に、巣ごもり需要によるまとめ買いが多く見られたほか、テイクアウトやデリバリーなどのサービスを提供する一部外食で、外出自粛やテレワークの実施による家族客の利用が増加し、プラスで推移しました。一方、アパレル専門店や居酒屋では昨年に対し大幅なセールの値下げや、各種キャンペーンなどを実施しており、客単価の減少が見られました。
なお5月対比では、緊急事態宣言の解除や「特別定額給付金」の給付拡大に伴い、消費意欲が大きく高まり、客数に16.1ポイントの改善が見られました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem