月次報告

小売業月次売上高レポートvol.31

10月は前年の低水準で8ヶ月振りにプラス転換

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。

22サブセクターのうち、プラスは17サブセクター:

10月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比0.5%増、うち、純小売りは5.0%増、外食は9.1%減となりました。プラスのサブセクターは17サブセクターとなりました。
10月は、前年の消費増税後の買い控えで、多くのサブセクターがプラスに転じました。家電量販店や家具・ライフスタイル型専門店は、高単価商材が好調だったことに加え、テレワークや巣ごもり需要も堅調な推移が続きました。また、前年同月に見られた売上に大きな影響を与える程の大型台風の到来もなく、秋晴れに恵まれたことに加え、政府によるGo ToトラベルやGo To Eatなどの経済活性策や、スポーツ観戦などの制限緩和も追い風となり、前月との対比では、たばこ税増税の影響を受けたコンビニエンスストアを除く全てのサブセクターでプラスとなりました。気温の低下や外出機会の増加に伴い、動きの鈍かった秋冬衣料が動いたことや、行楽やアウトドアに出かける人が多かったことでスポーツウェアなども好調に推移し、新型コロナウイルス感染拡大以降、低調な推移が続いていたアパレル専門店はカジュアル衣料を中心に13ヶ月振りにプラスに転じました。
一方、外食セクターでは、新型コロナウイルスの感染拡大の落ち着きや、Go To Eatの後押しにより客数の回復は見られたものの、売上は前年には届きませんでした。
訪日外国人数は、10月1日以降、ビジネス目的での一定条件下において、全ての国・地域からの入国が可能になったことで27,400人(前年同月比98.9%減)と7ヶ月振りに2万人を超えましたが、依然低水準が続いています。
10月は、月の前半は「台風14号」が本州に接近し、一部地域では大雨特別警報が発表されるなど、東・西日本海側を中心に大雨となるところがありました。一方、下旬では、東・西日本は降雨が少なく晴れた日が続いたほか、最低気温が前年に比べ2℃低く推移し、寒い日が続いたため、暖房機器などの季節商材や秋物衣類などが好調に推移しました。
曜日回りは、前年同月に比べ休日が1日減となりました。
10月度データ集計企業数は、207社(純小売り142社、外食65社)でした。

サブセクター別伸び率:

上位3サブセクターは、家電量販店(29.8%増)、通販(26.4%増)、スポーツ専門店(14.7%増)。下位3サブセクターは、居酒屋(21.8%減)、コンビニエンスストア(6.8%減)、ファミリーレストラン(6.4%減)でした。
家電量販店では、前年の買い控えの反動増に加えて、テレワークやイエナカ需要の継続でパソコン関連商材や美容・調理家電が好調に推移しました。また、気温の低下に伴い、ヒーター、こたつなどの暖房機器も売上を押し上げ、コジマ(7513)が42.1%増、ビックカメラ(3048)が17.5%増となりました。
スポーツ専門店では、テレワークの継続やスポーツイベントの中止などに伴い、健康意識の高まりから、比較的、密を避けられるゴルフやキャンプなどのアクティビティが好調に推移しました。ゴルフ・ドゥ(3032)は、ゴルフ需要の高まりに加え、新作クラブの発売が売上を牽引し22.0%増となりました。アルペン(3028)は、ゴルフ用品の好調に加え、ベランピングなど室内キャンプといった新しい需要の高まりから、テントやアウトドアチェア、バーべキュー用品などの関連商品が好調に推移し18.9%増となりました。
ランク外とはなりましたが、アパレル専門店では、秋物衣料が好調に推移し、消費増税前の駆け込み需要があった2019年9月以来、初めてプラス転換しました。また、密を避けて買い物ができるロードサイド店舗が支持されていることや、生活様式の変化からファッションのカジュアル化が進み、西松屋チェーン(7545)が23.7%増、しまむら(8227)が20.7%増、ファーストリテイリング(9983)が16.2%増など、カジュアル衣料チェーンが全体を牽引しました。

一方、居酒屋では、Go To Eatなどの後押しもあり、前月対比では客数客単価ともに改善が見られましたが、前年対比では総合居酒屋を中心に客足の戻りが鈍く、チムニー(3178)が39.3%減、テンアライド(8207)が36.4%減、ワタミ(7522)が35.0%減と、各社苦戦しました。
コンビニエンスストアでは、ポプラ(7601)が10.0%減、ミニストップ(9946)が8.9%減、ローソン(2651)が6.9%減となりました。前月のたばこ税増税による買い控えにより客数が伸び悩み、低調でした。
ファミリーレストランでは、Go To Eatを受けて、前月に比べ客数は改善したものの、都心部や駅前など人出の多い地域に位置する店舗や訪日外国人の利用が多かった業態などは客数が戻らず、WDI(3068)が27.8%減、カルラ(2789)が17.9%減、サンマルクホールディングス(3395)が12.0%減となりました。

「3-12」トップスリー:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。

3-12の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):

HAPiNS(7577)、ベリテ(9904)、ファーストリテイリング゙(9983)

3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):

DD ホールディングス(3073)、きちり(3082)、チムニー(3178)

既存店客数および客単価の推移:

10月の客数及び客単価は、それぞれ5.1%減、3.1%増となりました。10月は、前年の消費増税後の買い控えにより、多くのサブセクターでマイナス幅が縮小し、既存店売上高売上高はプラスに転じました。客数は、Go ToトラベルやGo To Eatなどの政府による経済活性策の後押しや前年に見られた大型台風の上陸がなかったことから、マイナス幅の縮小が見られました。
客単価は、巣ごもり需要による食料品などのまとめ買いに加え、気温の低下に伴い、動きの鈍かった秋物衣料や暖房機器などの季節商材が好調に推移したことで大きく伸長しました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem
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