小売業月次売上高レポートvol.32
11月はサブセクター間の伸長率差異が縮小傾向
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
22サブセクターのうち、プラスは14サブセクター:
11月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比3.9%減、うち、純小売りは0.2%減、外食は11.8%減となりました。プラスのサブセクターは14サブセクターとなりました。
11月は、Go ToトラベルやGo To Eatなどの経済支援策の後押しに加え、自粛に対する緊張が一部緩和したこともあり、これまで弱かったサブセクターはマイナス幅が縮小し、逆に強かったサブセクターの伸長率が落ち着くなど、サブセクター間の伸長率の幅が縮小しました。また、外食では、オンライン予約サイト経由のGo To Eatキャンペーンの活用如何によって、客数の回復に差異が見られました。家具・ライフスタイル型専門店や家電量販店では、パソコンやワーキングデスクなどの在宅勤務関連商材の需要が落ち着き、自宅で快適に過ごすための高機能家電や住宅設備などへの需要のシフトが見られました。
一方、月の後半は、札幌や首都圏などを中心に新型コロナウイルスの感染が再拡大し、勤労感謝の日を含む三連休における大型イベントの中止や、酒類を提供する飲食店などへの営業時間短縮要請など、自粛の動きが強まりました。居酒屋などでは、法人を中心に大人数の集まりを控える傾向が依然強く、忘年会などの宴会需要が減少しました。アパレル専門店は、前年よりも気温が暖かく推移したことや、ブラックフライデーなどの大型セールが振るわず、客数・客単価ともに低調でした。
訪日外国人数は、一部の国と日本との間で、隔離待機緩和策の運用が開始されたことや、11月1日以降、11の国・地域に対する感染症危険情報がレベル2 に引き下げられるなどの緩和措置が取られたことから、56,700人(前年同月比97.7%減)と、若干の回復傾向にありますが、低水準が続いています。
11月は全国的に暖かい日が続いたほか、東京都では、降雨日数が前年同月比8日減となるなど、天候に恵まれた月となりました。月を通じて暖かい日が続いたことから、冬物衣料や暖房機器などの季節用品の動きが鈍くなりました。
曜日回りは、前年同月比1日増。11月度データ集計企業数は、207社(純小売り142社、外食65社)でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、家電量販店(19.8%増)、通販(13.3%増)、ホームセンター(7.7%増)。下位3サブセクターは、居酒屋(26.9%減)、百貨店(16.0%減)、アパレル専門店(10.3%減)でした。
家電量販店では、TV、白物家電などの高機能商品やテレワーク関連商材が好調に推移したことに加え、新型iPhoneシリーズや新型ゲーム機の発売が売上を押し上げ、コジマ(7513)が35.1%増、ビックカメラ(3048)が4.4%増となりました。
上位第5位となった回転寿司は、他の外食同様マイナス基調が続いていたところから10月から一転、2ヶ月連続でプラス推移となりました。予約サイトを経由したGo To Eatキャンペーンの利用が好調で、くら寿司(2695)33.8%増、アトム(7412)3.2%増、カッパ・クリエイト(7421)1.4%増となりました。また、くら寿司(2695)は9月から実施している人気アニメやディズニーとのコラボレーション企画が客数の伸長に寄与し、既存店売上高は3ヶ月連続プラスで推移しました。
一方、外食の中でも、居酒屋は依然客数のマイナス幅が大きく、チムニー(3178)が48.0%減、テンアライド(8207)が43.9%減、大庄(9979)が42.4%減と、全銘柄のワースト3を占めました。第3波の到来以降、宴会の自粛ムードが強まり、予約のキャンセルが相次ぐなど、厳しい推移が続いています。一方、換気の良い焼肉店などの専門居酒屋は、Go To Eatを利用した予約が好調に推移し、マイナス幅が1ケタまで縮小するところもありました。
百貨店は、松屋(8237)が26.3%減、大丸松坂屋(J.フロント リテイリング 3086)が20.1%減、丸井グループ(8252)が19.9%減となりました。依然2ケタのマイナスが続くものの、6月以降の水準に比べると各社マイナス幅は縮小傾向にあります。ラグジュアリー商品や家具・家電など高単価商材が好調なほか、年末の帰省控えなどを受け、クリスマスケーキ、おせちなどの予約販売が好調に推移しました。
アパレル専門店では、ブラックフライデーなどの大型セール実施期間中、気温が高く推移したことによる季節商品の不振に加え、外出の機会が減る中で、ファッション衣料やスーツに対するモチベーションは依然弱く、ワールド(3612)が27.8%減、ユナイテッドアローズ(7606)が27.3%減、はるやま商事(7416)が21.0%減となりました。
「3-12」トップスリー:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
3-12の絶値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
HAPiNS(7577)、くら寿司(2695)、はせがわ(8230)
3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
フライングガーデン(3317)、ワタミ(7522)、アトム(7412)
既存店客数および客単価の推移:
11月の客数及び客単価は、それぞれ8.2%減、2.5%増となりました。11月は「第3波」到来などを受け、外出を自粛する傾向が強くなりましたが、Go To Eatなどの政府支援策が奏功し、外食を中心に客数のマイナス幅が縮小傾向にあります。客単価は、食料品などのまとめ買いの影響で、プラスの推移が続きますが、客数の改善に伴い、伸長率が緩やかになりつつあります。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem