月次報告

小売業月次売上高レポートvol.36

3月既存店売上高は2.4%増。プラスに転じるも実態は厳しい

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。注:2年計は一昨年対比を示します。

22サブセクターのうち、プラスは13サブセクター:

3月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比2.4%増、うち、純小売りは5.0%増、外食は3.1%減で、プラスのサブセクターは既存店前年比では全22サブセクター中13サブセクターとなりましたが、2年計では通販、リサイクルショップ、スーパーなどの7サブセクターにとどまりました。
東京都では、降雨日数が前年同月と同日数、最高気温平均値17.9℃(前年同月比+1.8℃)、最低気温平均値8.3℃(同+2.1℃)となりました。3月は北・東・西日本では1946年の統計開始以来3月として最も高い気温となりました。
曜日回りは、休日が前年同月比2日減。データ集計企業数は、210社(純小売り142社、外食68社)です。

サブセクター別伸び率:

上位3サブセクターは、通販(17.7%増)、百貨店(16.8%増)、家電量販店(15.7%増)。下位3サブセクターは、居酒屋(12.8%減)、ドラッグストア(6.3%減)、本・CD・DVD販売/レンタル専門店(4.5%減)となり、百貨店は19年8月の消費増税前の駆け込み需要増による増収以来、18ヶ月振りにプラスに転じました。

上位サブセクターのうち、百貨店では、前年に実施された臨時休業や時短営業に対する反動増や、一部国内富裕層を中心とした需要回復により全社プラスの推移となりましたが、一昨年の水準に対しては、8掛けにとどまるなど、依然厳しい状況が続いています。その中で、松屋(8237)は、ラグジュアリーブランドや化粧品など、富裕層を中心とした国内消費が好調だったことで、免税を除く国内売上高は約30%増(一昨年対比7%増)となりました。これが牽引役となり、既存店売上高は、一昨年に比べて13.8%減と、減収ながらも他の百貨店に比べて強い戻りが見られました。

家電量販店のコジマ(7513)は、既存店売上高が22.8%増となり、一昨年の水準と比べてもプラスで推移しました。政府によるテレワークの推進に加え、4月1日から本格始動する文部科学省主導のギガスクール構想において、義務教育学校では「1人1台端末」環境の整備が進み需要が拡大している背景から、パソコン関連商材が68.9%増と好調でした。また、EC限定のPayPayキャンペーンなどが奏功しEC売上高は前年の2倍となりました。

一方、下位サブセクターでは、ドラッグストアが、昨年の紙製品やマスクなど衛生用品の一部パニック的な購買行動の反動を受け、各社厳しい推移となったものの、調剤併設薬局を主力とするウエルシアホールディングス(3141)、スギHD(7649)は、物販のマイナスを調剤がカバーしそれぞれ1.9%増、0.1%増となりました。

その他特筆すべき点として、アパレル専門店では、前年の低ハードルにより、24社中21社がプラスで推移しました。暖かい気候から一部の企業では春夏物が動きましたが、一昨年比では18.3%減となり、増収は、一部の実需衣料専門店のみにとどまるなど、依然厳しい状況が続いています。ファーストリテイリング(9983)はイエナカ商材やジルサンダーとのコラボレーション商品が好調に推移しました。また、4月から始まる消費税の総額表記義務化に先立ち、従来の本体価格を販売価格に据え置くとしたことから、客単価は4.4%減となった一方で客数が大きく伸長し、既存店売上高は29.0%増となりました。しかしながら、一昨年対比では1.2%増と、コロナ前の水準に対しほぼ横ばいとなりました。

「3-12」トップスリー:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。

3-12の絶値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):

グローバルダイニング(7625)、良品計画(7453)、J.フロントリテイリング (3086)

3-12の前月比改善(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):

グローバルダイニング(7625)、チムニー(3178)、松屋(8237)

既存店客数および客単価の推移:

3月の客数及び客単価は、それぞれ3.0%減、2.6%増となりました。客数は、緊急事態宣言の解除を受け外出意欲が高まり、前月比では16.4ポイント改善しましたが、前年に比べ休日が2日少なかったこともあり、マイナスが続きました。客単価は、医療機関の受診控えに伴い長期処方を出す医療機関が増え、ドラッグストアの調剤単価が伸長したほか、客数と客単価の双方が下がる形で苦戦が続いていた居酒屋業態において客単価の回復が見られました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem
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