小売業月次売上高レポートvol.37
4月既存店売上高は20.5%増となるが一昨年比では依然厳しい
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらのニュースにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響で異常値となっており、2021年の会社発表既存店売上高数値のまま計算すると実態から乖離した数値となってしまうため実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本投稿の末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。
22サブセクターのうち、プラスは18サブセクター:
4月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比20.7%増、うち純小売りは18.3%増、外食は26.1%増、プラスのサブセクターは全22サブセクター中18サブセクターとなりました。前年の緊急事態宣言発出に伴う臨時休業や外出自粛などの反動増から、過去1年ではプラスのサブセクターが最も多い月となりましたが、一昨年比での増収は、通販、リサイクルショップ、スーパーなど、生活必需品に近い商品を多く取り扱う小売業を中心に7サブセクターにとどまるなど、実態は依然厳しい状況が続いています。
天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比1日減、最高気温平均値20.6℃(前年同月比+2.8℃)、最低気温平均値10.3℃(同+2.5℃)となりました。高気圧に覆われたことや暖気の影響から全国的に暖かく、東京は前年に比べ20℃を超える日が9日多くなるなど暖かい日が続きました。
曜日回りは、前年同月と同数。データ集計企業数は、197社(純小売り136社、外食61社)でした。
サブセクター別伸び率:
上位3サブセクターは、百貨店(52.3%増)、身回り品専門店(44.0%増)、アパレル専門店(41.3%増)。下位3サブセクターは、スーパー(6.4%減)、ドラッグストア(5.9%減)、ディスカウントストア・100円ショップ(5.8%減)でした。
上位3サブセクターにおいて、既存店売上高は、各サブセクター共に前年比4割超の増収だったものの、一昨年比では2割以上のマイナスとなるなど、コロナ前の水準からは厳しい状況が続いています。
百貨店は、前年においては月初から臨時休業だった反動で、そごう・西武(セブン&アイ・ホールディングス 3382)が64.7%増(会社発表数値296.7%増)、三越伊勢丹(三越伊勢丹HD 3099)が59.5%増(同378.8%)、パルコ(J.フロントリテイリング 3086)が54.4%増(同305.5%)と、各社4割以上の大幅増となりました。国内富裕層を中心とした消費は活発なものの、免税売上の低迷や緊急事態宣言の再発出の影響などが依然として全体を押し下げており、一昨年比では、2ケタ以上の減収となりました。
一方、下位3サブセクターにおいては、既存店売上高は、前年比では各サブセクター共にマイナスだったものの、一昨年比ではプラスとなりました。
スーパーは、前年の高ハードルや巣ごもり需要の落ち着きから、既存店売上高はマイナスとなったものの、一昨年比では4.3%増となりました。まん延防止措置の実施や緊急事態宣言の再発出などを受けた都心エリアでは、コロナ前よりも高い需要が続いており、一昨年比でベルク(9974)が14.5%増(同5.6%減)、ヤオコー(8279)が14.2%増(同3.9%減)などとなりました。
「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、ご紹介していきます。
■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
グローバルダイニング(7625)、良品計画(7453)、J.フロントリテイリング (3086)
■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
グローバルダイニング(7625)、チムニー(3178)、松屋(8237)
既存店客数および客単価の推移:
4月の客数及び客単価は、それぞれ19.2%増、2.0%増となりました。
客数は、前年に大型商業施設や居酒屋などで全店休業を実施した反動増により、14ヶ月振りにプラスに転じました。客単価は、外食への自粛要請が継続する中、内食やテイクアウト、デリバリーなどへの需要が依然高く推移しているほか、前年における衛生用品や紙製品などの駆け込み購買に伴う客単価減少の反動により、ドラッグストアなどでプラスの推移が続いています。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem
2021年1月から採用する新基準概要:
図表3:既存店開示数値の弊社新基準について
出所:Hidden Gem作成