小売業月次売上高レポートvol.38
5月既存店売上高は、一昨年比でマイナス幅が拡大
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響で異常値となっており、2021年の会社発表既存店売上高数値のまま計算すると実態から乖離した数値となってしまうため実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本投稿の末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%)
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。
22サブセクターのうち、プラスは16サブセクター:
5月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比10.9%増、うち純小売りは9.3%増、外食は14.5%増、プラスのサブセクターは全22サブセクター中16サブセクターとなりました。一昨年比でのプラスのサブセクターは、前月に比べ2サブセクター増加し9サブセクターとなりましたが、全銘柄ではマイナス幅が拡大し、実態は依然厳しい状況が続いています。
天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比2日減、最高気温平均値24.1℃(前年同月比+0.1℃)、最低気温平均値15.7℃(同+0.1℃)となりました。東京の降雨日数・降雨量は共に前年とほぼ変わらず同じでしたが、西日本側は前年よりも梅雨入りが早く、大阪などは梅雨前線の活動が活発化し、一時大雨に見舞われるなど、前年よりも降雨量が多くなりました。
曜日回りは、前年同月と同数。データ集計企業数は、186社(純小売り128社、外食58社)でした。
サブセクター別伸び率:
以下、2019年対比での実態を把握しやすくするために、サブセクター及び各社の数値に関しては、5月既存店売上高前年比の会社発表数値ではなく弊社で編集した一昨年対比の数値で示しています。上位3サブセクターは、通販(23.8%増)、リサイクルショップ(10.4%増)、スーパー(8.3%増)。下位サブセクターは、居酒屋(54.6%減)、百貨店(44.7%減)、家具・ライフスタイル型専門店(38.7%減)でした。なお、ライフスタイル型専門店は対象社数が2社となります。
プラスのサブセクターは通販、リサイクルショップ、スーパーなど生活必需品を取り扱う小売業の増収が目立った一方、政府・自治体からの自粛要請に伴う一部消費活動の低迷により、外食や非生活必需品を取り扱う百貨店、アパレルなどは厳しい推移が続いています。
上位3サブセクターにおいて、通販では、工業用間接資材の通販サイト「モノタロウ」を運営するMonotaRO(3064)が31.6%増、アスクル(2678)が16.4%増とコロナ前水準よりも大きく伸長しました。
前年において、緊急事態宣言の発令に伴う外出自粛やテレワークの推奨を受けて低迷していた法人向け需要が回復したことに加えて、在宅勤務が定着しつつある中、間接材などの個人購入が増加しました。スーパーでは、前年の高ハードルがありながらも、緊急事態宣言の対象エリア拡大などアルコールを取り扱う外食を中心に厳しい営業規制がさらに広まり、内食需要や家飲みニーズが高まったことから、ベルク(9974)が19.2%増、ダイイチ(7643)が16.8%増、ヤオコー(8279)が16.4%増となるなど食品スーパー15社中14社がコロナ前よりも増収となりました。
一方、下位3サブセクターにおいては、百貨店が一昨年比で4割以上の減収と厳しい推移が続いています。国内富裕層の消費の活発化やデジタルを活用した販売活動などが売上を牽引する一方、インバウンドによる免税売上の大幅な落ち込みは続いています。加えて、当月は緊急事態宣言の延長により関西エリアが特に影響を受け、阪急百貨店(8242)が69.1%減と同業他社を大幅に下回りました。
家具・ライフスタイル型専門店は、ニトリ(9843)がテレワーク需要増の一巡を迎えながらも2.9%減にとどまった一方、良品計画(7453)は商業施設の休業要請を受けて、連休期間中に国内の2割の店舗で臨時休業を実施したことなどから50.9%減と、コロナ前水準から大きく減収となりました。
「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。
■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
グローバルダイニング(7625)、コメ兵HD(2780)、京都きもの友禅(7615)
■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
一家ダイニングプロジェクト(9266)、WDI(3068)、NATTY SWANKY(7674)
既存店客数および客単価の推移:
5月の客数及び客単価は、それぞれ8.4%増、0.5%増となりました。
客数は、前年の大幅減の反動で外食や身回り専門店、アパレルなどで大きく伸長しましたが、一昨年比では2割以上のマイナス幅となり、コロナ前水準からは依然大きな減少が見られます。客単価は、アルコールの提供や外食の自粛継続に伴い、内食やテイクアウト、デリバリーなどへの需要が依然高いほか、紳士服専門店などでは、昨年低迷したスーツ需要の回復などが見られました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem
2021年1月から採用する新基準概要:
図表3:既存店開示数値の弊社新基準について
出所:Hidden Gem作成