月次報告

小売業月次売上高レポートvol.39

6月の既存店売上高は、5.7%減とマイナスに転じる

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響で異常値となっており、2021年の会社発表既存店売上高数値のまま計算すると実態から乖離した数値となってしまうため実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本投稿の末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。

22サブセクターのうち、プラスは5サブセクター:

6月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比5.7%減、うち純小売りは6.8%減、外食は3.2%減。前年における特別定額給付金による恩恵の反動や、緊急事態宣言(前年同月は未実施)の影響を受け、プラスのサブセクターは全22サブセクター中5サブセクターとなりました。他方、一昨年比でのプラスのサブセクターは7サブセクターとなり、通販や中食などデリバリー関連や、スーパー、ホームセンターなどの実需関連のサブセクターでのプラスの推移が続いています。
天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比1日増、最高気温平均値27.3℃(前年同月比-0.1℃)、最低気温平均値19.4℃(同-0.4℃)となりました。初旬は、低気圧の通過や台風3号の影響で、全国的にまとまった雨が降りましたが、その後南から暖かい空気が流れ込み、本州は梅雨前線の影響を受けにくく、気温が高く晴れた日が続きました。
曜日回りは、前年同月と同数。データ集計企業数は、198社(純小売り138社、外食60社)でした。

サブセクター別伸び率:

以下、2019年対比での実態を把握しやすくするために、サブセクター及び各社の数値に関しては、6月既存店売上高前年比の会社発表数値ではなく弊社で編集した一昨年対比の数値で示しています。
上位3サブセクターは、通販(22.9%増)、その他(7.6%増)、スーパー(5.2%増)。下位サブセクターは、居酒屋(55.8%減)、ファミリーレストラン(29.6%減)、身回り品専門店(23.6%減)でした。

プラスのサブセクターは、生活必需品を取り扱う小売業を中心に増収が続いている一方、緊急事態宣言の延長から、居酒屋やファミリーレストランなどの外食や非生活必需品を取り扱う百貨店などは厳しい推移が続いています。
上位3サブセクターにおいて、通販では、昨年同月が需要増のピークであったため、既存店は反動を受け20ヶ月振りにマイナスに転じたものの、一昨年比では引き続きサブセクター第1位となりました。また、個別企業でも、通販サイト「モノタロウ」を運営するMonotaRO(3064)が54.4%増と全銘柄中第1位、ジェネレーションパス(3195)が45.8%増と同2位、ベルーナ(9997)が27.3%増と同4位、と、5社中3社が上位5位を占め、法人および個人からの通販のニーズは依然強い高まりが続いています。

一方、下位3サブセクターにおいては、居酒屋が一昨年比55.8%減と下位第2位のファミリーレストラン(29.6%減)に大きく差をつけて最下位となりました。都心を中心とした多くの店舗で休業や時短営業を実施する、一家ダイニングプロジェクト(9266)(92.4%減)や鳥貴族(3193)(86.8%減)、マルシェ(7524)(81.6%)は8割以上の減収と厳しい趨勢が続いています。一方、通常営業を実施するNATTY SWANKY(7674)、グローバルダイニング(7625)の2社はそれぞれ31.4%増、14.4%増となるなど、上位と下位の間には120ポイント以上の差がつきました。

その他サブセクターにおいては、コンビニエンスストアが、郊外住宅地立地の多いスリーエフ(7544)が1.1%増と立地要因による追い風によって好調な推移が続いているほか、マイナスの推移が続いていた大手三社では、ローソン(2651)が7.1%減、ファミリーマート(8028)が5.2%減とマイナスが続く一方、社会変化への対応力の高さからセブン-イレブン・ジャパン(セブン&アイ・ホールディングス 3382)が0.7%増とプラスに転じ、コロナ前を超える水準となりました。

「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。
■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
グローバルダイニング(7625)、NATTY SWANKY(7674)、京都きもの友禅(7615)
■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
NATTY SWANKY(7674)、クスリのアオキHD(3549)、Genky DrugStores(9267)

既存店客数および客単価の推移:

6月の客数及び客単価は、それぞれ6.6%減、0.8%減となりました。
客数は、前年の消費の活発化による客数増の反動に加え、外出自粛の影響を受け、再びマイナスに転じました。客単価は、前年のスーパーやコンビニエンスストアなどの巣ごもり需要によるまとめ買いや、中食や回転寿司などのデリバリー利用の拡大による単価増の反動を受け、15ヶ月振りにマイナスに転じました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem

2021年1月から採用する新基準概要:

図表3:既存店開示数値の弊社新基準について 出所:Hidden Gem作成

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