月次報告

小売業月次売上高レポートvol.40

7月:全体トレンド変わらずも、外食のマイナス幅が縮小

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響により異常値となった関係で、2021年の同会社発表伸長率から実態を把握することが難しいため、実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本レポートの末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(2年計降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。

22サブセクターのうち、プラスは9サブセクター:

7月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比0.4%減、うち純小売りは1.0%減、外食は0.9%増。プラスのサブセクターは、全22サブセクター中9サブセクター、同2019年対比では10サブセクターとなりました。通販や自転車業態、スーパー、ホームセンターなど、コロナを発端に新たな需要が創出されたサブセクターの伸長が続いたことに加え、7月23日に開幕したオリンピックにより、スポーツ専門店(同4.5%増)や中食(5.8%増)の伸びが顕著となりました。

なお、外食においては、居酒屋業態は苦境が続くものの、それ以外の業態では復調が見られ、緊急事態宣言による一時閉店の反動増があった2021年4月、5月を除くと、15ヶ月振りにプラスに転じました。

天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比12日減、最高気温平均値30.3℃(前年同月比+2.7℃)、最低気温平均値22.9℃(同+1.1℃)となりました。関東甲信では、7月16日、前年より16日早い梅雨明けとなったことから、中旬以降は、最高気温が前年を大きく上回る暑い日が続きました。

曜日回りは、前年同月比1日増(土曜日)。データ集計企業数は、199社(純小売り137社、外食62社)でした。

サブセクター別伸び率:

以下、サブセクターの売上高伸長率は、実態を把握し易くするために、2019年からの2年間の伸長率を基準にランキングをお示ししております。

上位3サブセクターは、通販(18.2%増)、中食(8.3%増)、その他(6.5%増)。下位サブセクターは、居酒屋(45.2%減)、ファミリーレストラン(18.5%減)、百貨店(17.5%減)でした。

プラスのサブセクターは、コロナを機に新たな需要が創出された業種・業態を中心に増収が継続しています。一方、自粛要請が長引く居酒屋や、悪化幅は改善傾向にあるものの、不要不急に該当する小売・外食業態が相対的に厳しい状況が続いています。

第1位の通販では、法人および個人からのオンライン経由での購買需要は引き続き拡大し、ECサイトリコメン堂を展開するジェネレーションパス(3195)が2019年同月比54.7%増、通販サイト「モノタロウ」を運営するMonotaRO(3064)が同29.9%増と、全銘柄中第1位、第2位となりました。

サブセクター第2位の中食では、テイクアウト需要の伸びから小僧寿し(9973)が同26.5%増となり、昨年に比べても8.4%増と需要増が顕著となりました。サブセクター第3位の「その他」では、ワークマン(7564)同28.0%増、自転車チェーンのあさひ(3333)同9.4%増と、引き続き、コロナを機に需要増が顕著となった業種・業態の売上伸長が顕著でした。

下位サブセクターの顔ぶれは大きな変化はありませんが、居酒屋及びファミリーレストランでは、売上の悪化幅は徐々に縮小傾向にあり、それと同時に、企業・業態間格差が広がりつつあります。

居酒屋では、営業自粛を順守している企業では、2019年対比で3-5割の売上水準にとどまっているのに対し、通常通りの営業を続けるグローバルダイニング(7625)や、「肉汁餃子のダンダダン」を展開するNATTY SWANKY(7674)では、それぞれ同16.4%増、23.9%増となるなど、大きな売上の隔たりが発生しています。

ファミリーレストランは、2019年対比6-9掛けの水準まで回復しています。「焼肉きんぐ」などを展開する物語コーポレーション(3097)や、ハンバーグを強みとするフライングガーデン(3317)、王将フードサービス(9936)など、強いシグニチャーメニューを持つ業態やテイクアウトがし易い業態などでは同95-98%と、概ね2019年の水準まで回復しつつあるものの、「デニーズ」を展開するセブン&アイ・フードシステムズ(3382)や、すかいらーくHD(3197)、サイゼリヤ(7581)などの幅広いメニューを取り揃えた従来型のファミレス業態では、同6-7掛けで売上がとどまるなど、業態間格差が顕著となっています。

同様の傾向がファストフードにも見られ、「ケンタッキーフライドチキン」を展開する日本KFC HD(9873)、日本マクドナルドHD(2702)、モスフードサービス(8153)、「かつや」を展開するアークランドサービスHD(3085)、「すきや」などを展開するゼンショーHD(7550)では、2019年比1−2割の増収となる一方、「いきなり! ステーキ」を展開するペッパーフードサービス(3053)や居酒屋代わりの利用が活発だった「日高屋」のハイデイ日高(7611)では同5掛けにとどまるなど、業態間でのばらつきが大きくなっています。ファストフードは、テイクアウトのし易さなども優勝劣敗の一因となっています。

「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。

■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
NATTY SWANKY(7674)、グローバルダイニング(7625)、WDI(3068)

■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
日本KFC HD(9873)、トップカルチャー(7640)、NATTY SWANKY(7674)

既存店客数および客単価の推移:

7月の客数及び客単価は、それぞれ1.3%減、0.3%増となりました。コロナ禍で特需があり、客数が大きく伸長していたサブセクターでは一巡感が見られたほか、リモートワーク関連需要で伸長していた家具・ライフスタイル型専門店の客単価が減少するなどしました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem

2021年1月から採用する新基準概要:

図表3:既存店開示数値の弊社新基準について 出所:Hidden Gem作成

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