月次報告

小売業月次売上高レポートvol.41

8月:感染拡大による外出自粛で基調は再び悪化

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響により異常値となった関係で、2021年の同会社発表伸長率から実態を把握することが難しいため、実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本レポートの末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(2年計降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。

22サブセクターのうち、プラスは3サブセクター:

8月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比7.8%減、うち純小売りは7.6%減、外食は8.3%減。プラスのサブセクターは、全22サブセクター中3サブセクター、同2019年対比では5サブセクターにとどまりました。

感染力の強いデルタ株の流行による感染拡大が収まる気配を見せない中、緊急事態宣言地域の拡大もあり、外出を自粛する傾向がより強くなったことから、全体的に数字は押し下げられました。さらに、中旬にかけて気温低下や降雨が続いたことで、季節商材が動かなかったこともマイナスに響きました。7月26日から8月11日までオリンピックが、また8月24日から9月5日までパラリンピックがそれぞれ開催されましたが、緊急事態宣言下で、その殆どが無観客試合だったことから、全体的な売上の影響は限定的だったものと見られます。

天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比9日増、最高気温平均値31.6℃(前年同月比-2.4℃)、最低気温平均値24.3℃(同-1.0℃)となりました。中旬には、梅雨明けしたはずの梅雨前線が再び活発化する「戻り梅雨」なる現象が発生し降雨が続いたほか、東京では気温が前年を10-14℃下回るなど、季節商材が動かず、お盆商戦は大きな打撃を受けました。

曜日回りは、前年同月比1日減(土曜日)。データ集計企業数は、200社(純小売り140社、外食60社)でした。

サブセクター別伸び率:

以下、サブセクターの売上高伸長率は、実態を把握し易くするために、2019年からの2年間の伸長率を基準にランキングをお示ししております。

上位3サブセクターは、通販(25.8%増)、スーパー(5.3%増)、リサイクルショップ(4.0%増)。下位サブセクターは、居酒屋(58.6%減)、ファミリーレストラン(34.4%減)、百貨店(31.0%減)でした。

感染力の強いデルタ株の流行による感染拡大が収まる気配を見せない中、家ナカでの消費傾向が強く見られました。逆に、一段と厳しい自粛要請が求められたことや、天候悪化によりアパレルなどの季節商材を扱うサブセクターは、一段と厳しさが増しました。

第1位の通販では、法人および個人からのオンライン経由での購買需要は引き続き拡大し、ECサイト「リコメン堂」を展開するジェネレーションパス(3195)が2019年同月比44.6%増、通販サイト「モノタロウ」を運営するMonotaRO(3064)が同44.1%増と、全銘柄中第1位、第2位となりました。

サブセクター第2位のスーパーでは、集計企業21社中15社が2019年の水準を上回るなど、伸長トレンドが定着しています。その中でも、ベルク(9974)は同20.7%増と、続くヤオコー(8279)同15.9%増、ダイイチ(7643)同10.8%増を大きく引き離しています。

新型コロナウイルス感染拡大から1年以上が経過し、前年は来店頻度を抑えて買い物を済ませるお客様が多かったことから、客単価の上昇がスーパーの既存店売上高伸長の牽引役となっていました。一巡後は、客単価の増減は各社まばらとなる一方で、客数は、ベルクだけが2019年同月対比で7.4%増と、プラスの推移が続いていることが、同業他社との数値差異に繋がっています。同社では、「品質が良くて安い」「感じが良く快適なお店」などの基本の徹底を追求すると同時に、各店600坪の標準化された店舗展開にこだわり、オペレーションの標準化と単純化により生産性を高めることで、競争力のある価格を実現しています。

第3位のリサイクルショップでは、シュッピン(3179)同13.4%増、ハードオフコーポレーション(2674)同0.7%増が、共に2019年の水準を上回っています。シュッピンでは、買い取りをはじめとしたプロセスのEC化を積極的に進める中、主力のカメラや時計が中古品を中心に好調に推移しました。

一方、下位サブセクターでは、顔ぶれは大きな変化はないものの、各サブセクター共に悪化幅が拡大しました。

下位から4番目となったアパレル専門店では、お盆時期の気温低下や、帰省客の減少による客数減の影響もあり、軒並み厳しい結果となりました。2019年対比では、西松屋チェーン(7545)が4.2%増と、集計企業23社中唯一のプラスにとどまりました。前年はカジュアル衣料品が堅調な一方でスーツなどのビジネス寄りのウェアを展開する企業が苦戦を強いられるなど、商材で明暗がはっきり分かれていた傾向が、一巡を境に、2019年対比では5-9掛けと、市場ニーズの対応力による企業間格差が数字に現れ始めています。

「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。
■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
NATTY SWANKY(7674)、グローバルダイニング(7625)、WDI(3068)
■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
ジェネレーションパス(3195)、小僧寿し(9973)、トップカルチャー(7640)

既存店客数および客単価の推移:

8月の客数及び客単価は、それぞれ10.0%減、0.8%増となりました。緊急事態宣言下で、デルタ株の感染拡大により、外出を控える傾向が強まったことに加え、中旬にかけて気温低下や降雨が続き、季節商材需要が減退したことも、客数の大きなマイナスに繋がりました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem

2021年1月から採用する新基準概要:

図表3:既存店開示数値の弊社新基準について 出所:Hidden Gem作成

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