月次報告

小売業月次売上高レポートvol.42

9月:外出自粛で弱い売上基調が続く

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響による異常値で、2021年の同会社発表伸長率から実態を把握することが難しいため、実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本レポートの末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(2年計降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。

22サブセクターのうち、プラスは6サブセクター:

9月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比6.3%減、うち純小売りは2.6%減、外食は14.4%減。プラスのサブセクターは、全22サブセクター中6サブセクター、同2019年対比では3サブセクターにとどまりました。

感染力の強いデルタ株の流行による感染拡大が見られた8月に対し、9月は感染者数の減少が顕著に見られ始めました。しかしながら、前年はGo To トラベルをはじめとする政府の経済政策による消費の押し上げがあった一方で、今年は、主要都市の緊急事態宣言が続く中、シルバーウィークの外出も限定的となるなどしたことで、売上は弱含む傾向が続きました。

天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比7日減、最高気温平均値26.2℃(前年同月比-2.2℃)、最低気温平均値19.3℃(同-2.2℃)となりました。月初には最高気温が25℃を下回る日も見られるなど、秋を感じさせる気候となりましたが、中旬以降は、再び気温が上昇し前年並みの暑さに戻るなどしたことで、季節商材の動きは活発化しませんでした。

曜日回りによる土日祝日の増減は、前年同月比なし。データ集計企業数は、203社(純小売り139社、外食64社)でした。

サブセクター別伸び率:

以下、サブセクターの売上高伸長率は、実態を把握し易くするために、2019年からの2年間の伸長率を基準にランキングをお示ししております。

上位3サブセクターは、通販(3.8%増)、スーパー(3.6%増)、中食(2.7%増)。下位サブセクターは、居酒屋(59.9%減)、家電量販店(38.9%減)、百貨店(35.8%減)でした。

第1位の通販では、オンライン経由での購買需要は引き続き拡大が続くものの、従来の2桁増からはトーンダウンしました。通販サイト「モノタロウ」を運営するMonotaRO(3064)は、2019年同月比が同41.0%増で、全銘柄中第1位となるなど、前月との趨勢に変化はなかった一方で、ECサイト「リコメン堂」を展開するジェネレーションパス(3195)が同9.8%増と、従来の4-5割増収と比べると伸び率は限定的となりました。

サブセクター第2位のスーパーでは、集計企業19社中15社が2019年の水準を上回るなど、伸長トレンドが定着しています。前月までの趨勢と同様、その中でも、ベルク(9974)は同14.2%増と、続くヤオコー(8279)同10.7%増、ダイイチ(7643)同8.9%増を大きく引き離しています。

第3位の中食では、小僧寿し(9973)同12.5%増、プレナス(9945)同11.8%増が、共に2019年の水準を上回っています。小僧寿しでは、持ち帰り、デリバリー共に好調に推移しています。持ち帰りでは、客単価が2桁増と牽引し、2019年同月比12.2%増だったほか、デリバリーでは、客数が2桁増と牽引し、同6.6%増となりました。

なお、下位サブセクターでは、居酒屋、百貨店などの顔ぶれに変化はありませんでした。

「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。
■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
NATTY SWANKY(7674)、チムニー(3178)、WDI(3068)
■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
ジェネレーションパス(3195)、ニトリHD(9843)、ワークマン(7564)

既存店客数および客単価の推移:

9月の客数及び客単価は、それぞれ8.6%減、0.4%減となりました。前年はGo To トラベルをはじめとする政府の経済政策による消費の押し上げがあった一方で、今年は主要都市の緊急事態宣言が続く中、シルバーウィークの外出も限定的となるなどしたことで、客数はマイナスとなりました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem

2021年1月から採用する新基準概要:

図表3:既存店開示数値の弊社新基準について 出所:Hidden Gem作成

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