月次報告

小売業月次売上高レポートvol.43

10月:2019年対比で概ね横ばいまで回復

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響による異常値で、2021年の同会社発表伸長率から実態を把握することが難しいため、実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本レポートの末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。

22サブセクターのうち、プラスは9サブセクター:

10月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比1.3%減、うち純小売りは0.4%減、外食は3.4%減。プラスのサブセクターは、全22サブセクター中9サブセクター、同2019年対比では13サブセクターとなりました。

10月1日より緊急事態宣言がほぼ半年ぶりに全面解除されたこともあり、幅広いサブセクターで改善が見られました。前年同月はGo To トラベルをはじめとする政府の経済政策による消費の押し上げがあったことから、半数以上のサブセクターにおいて既存店売上高は前年を下回りましたが、2019年対比では、消費税増税の駆け込みの反動減により、ハードルの比較的低い月であったことから、半数以上のサブセクターでプラスとなりました。

天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比2日増、最高気温平均値22.7℃(前年同月比+1.1℃)、最低気温平均値14.7℃(同+0.3℃)となりました。月初は最高気温が25℃を上回る夏日が続くなど、10月とは思えないほどの暑さに見舞われましたが、月後半は、近畿地方で前年に並び観測史上最も早い木枯らし1号が23日に吹くなど、一気に季節が加速する展開となりました。

曜日回りによる土日祝日の増減は、1日増(日曜日)。データ集計企業数は、198社(純小売り137社、外食62社)でした。

サブセクター別伸び率:

10月は、前年においても緊急事態宣言がなく、単純比較が可能であることから、以下、前年同月との伸長率を基準にランキングをお示ししております。

上位3サブセクターは、リサイクルショップ(4.7%増)、百貨店(3.3%増)、中食(2.8%増)。下位サブセクターは、家具・ライフスタイル型専門店(13.4%減)、居酒屋(9.2%減)、本・CD・DVD販売/レンタル専門店(6.0%減)でした。

サブセクター第1位のリサイクルショップでは、コメ兵HD(2780)17.5%増、シュッピン(3179)13.2%増が特に高い伸びとなりました。コメ兵HDでは、個人買取の好調が続く中、魅力的な商品が増え、ブランド・ファッション関連の売上が伸長しています。シュッピンでも、カメラ・時計などの中古品の商品が堅調に進捗するなど、不要不急な趣味性の高い商品の動きが顕著となっています。

第2位の百貨店は、パルコ(J.フロントリテイリング(3086)傘下)、丸井グループ(8252)を除く全ての百貨店でプラスとなりました。ランキングは上位ではあるものの、百貨店の場合は、2019年10月の売上高が消費税増税前の駆け込みの反動減で17.2%減と大きく落ち込んだ関係で、他のサブセクターよりもハードルの低い状態にありました。2020年10月も2.4%減と回復に乏しく、それに続く今月の3.3%増収は、本格回復と呼ぶにはもう少し時間を要するのが現状と言えます。

下位のサブセクターにおいては、前年の高需要の反動や月初に暖かい気温が続いたことによる季節商材の不振などから、ニトリHD(9843)で17.1%減、良品計画(7453)で9.7%減となるなど、家具・ライフスタイル型専門店の落ち込みが顕著でした。

居酒屋は、緊急事態宣言下でも営業を継続した「肉汁餃子のダンダダン」を展開するNATTY SWANKY(7674)、グローバルダイニング(7625)は、それぞれ、22.8%増、22.2%増と、引き続き前年を大幅に上回る売上基調となりました。一方、久しぶりの営業再開となった店舗も多く、9月までの水準から大きく改善が見られたものの、時短の影響や、客足が戻り切らないこともあり、売上開示企業のうち、前年を上回る改善が見られた企業は、上記を除くと皆無でした。

「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。
■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
NATTY SWANKY(7674)、ジェネレーションパス(3195)、WDI(3068)

■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
あさひ(3333)、フジ・コーポレーション(7605)、アイケイ(2722)

既存店客数および客単価の推移:

10月の客数及び客単価は、それぞれ3.2%減、1.3%増となりました。前年はGo To トラベルをはじめとする政府の経済政策による消費の押し上げがあったものの、今年は主要都市の緊急事態宣言が続く中、客数は前年を下回りました。一方、客単価は、外食において6ヶ月振りのプラスとなるなど、緊急事態宣言が解除される中、改善が顕著に見られました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem

2021年1月から採用する新基準概要:

図表3:既存店開示数値の弊社新基準について 出所:Hidden Gem作成

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