月次報告

小売業月次売上高レポートvol.44

11月:不要不急品の回復、必需品の弱含み。正常化に向けた兆しが見られる

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響による異常値で、2021年の同会社発表伸長率から実態を把握することが難しいため、実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本レポートの末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。

22サブセクターのうち、プラスは10サブセクター:

11月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比0.2%増、うち純小売りは0.4%増、外食は0.3%減。プラスのサブセクターは、全22サブセクター中10サブセクター、同2019年対比では12サブセクターとなりました。

新型コロナウイルスの感染者数が低水準にとどまっていることもあり、人出は大きく回復しつつあります。前年対比では、百貨店やアパレルなど、コロナ禍で苦戦を強いられたサブセクターが増収となり、増収率でトップだったリサイクルショップでも、不要不急品の伸びが顕著となりました。他方、コロナ前の2019年対比では、消費税増税の駆け込みの反動減で売上基調が弱くハードルが低い水準だったことを考慮すると、消費の回復は力強さに欠いているように見受けられます。

天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比1日増、最高気温平均値18.6℃(前年同月比横ばい)、最低気温平均値9.7℃(同-0.4℃)となりました。月前半は前年を上回るこの時期としては暖かい日が続きましたが、月後半に掛けては、東京でも最低気温が5℃を下回る日が見られるなど、冷え込みが強まりました。

曜日回りによる土日祝日の増減は、1日減(日曜日)。データ集計企業数は、199社(純小売り137社、外食63社)でした。

サブセクター別伸び率:

11月は、前年においても緊急事態宣言がなく、単純比較が可能であることから、以下、前年同月との伸長率を基準にランキングをお示ししております。

上位3サブセクターは、リサイクルショップ(13.0%増)、百貨店(8.7%増)、通販(7.1%増)。下位サブセクターは、家電量販店(18.6%減)、本・CD・DVD販売/レンタル専門店(10.6%減)、回転寿司(10.5%減)でした。コロナ前との比較では依然本格回復とは言えないものの、不要不急品に属するサブセクターの増収が顕著となりつつあります。

サブセクター第1位は、前月に続きリサイクルショップでした。個別銘柄では、コメ兵HD(2780)(41.1%増)とシュッピン(3179)(34.5%増)の基調が特に強くなっています。コメ兵HDでは、個人買取の好調が続く中、魅力的な商品が増え、ブランド・ファッション関連の売上が伸長しています。シュッピンでも、カメラ・時計などの中古品の商品が堅調に進捗するなど、不要不急な趣味性の高い商品の動きが顕著となっています。

第4位のアパレル専門店は、コロナ禍で苦戦を強いられてきたサブセクターのひとつでしたが、開示企業の7割で前年同月比プラスに転じるなど、回復が見られ始めています。多くの企業でプラスとなる中、ファーストリテイリング(9983)では、4ヶ月連続のマイナス推移が続いています。前年の相対的に堅調だった状況からの一巡と、今年4月からの消費税を含めた総額表示の義務化に伴い価格を据え置き、実質値下げをした以降、値下げほどの客数増を補えていないことが要因として考えられます。加えて、前年比での回復の兆しは顕著なものの、コロナ前の2019年対比で増収を達成しているのは、西松屋チェーン(7545)としまむら(8227)の2社にとどまるなど、本格回復にはまだ時間を要しそうです。

加えて、今月特筆すべき点として、居酒屋がプラスに転じたことが挙げられます。居酒屋は緊急事態宣言で店舗休業を余儀なくされた2020年4-5月の反動増で、今年同月こそプラスとなったものの、通常営業月では、大幅なマイナスが続いていたサブセクターでした。2019年対比では、引き続き25%超のマイナスとなっていますが、漸く底打ちが見られつつあります。

「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。
■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
テンアライド(8207)、ジェネレーションパス(3195)、チムニー(3178)

■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
ファーストリテイリング(9983)、一家ダイニングプロジェクト(9266)、鳥貴族ホールディングス(3193)

既存店客数および客単価の推移:

11月の客数及び客単価は、それぞれ1.9%減、1.6%増となりました。客数のマイナス幅は徐々に小さくなってはいるものの、大幅減となった前年を下回る推移が続いています。一方、客単価は、ゴルフが堅調なスポーツ専門店や需要が少しずつ戻り始めているアパレル専門店、外食などで改善傾向が見られています。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem

2021年1月から採用する新基準概要:

図表3:既存店開示数値の弊社新基準について 出所:Hidden Gem作成

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