月次報告

小売業月次売上高レポートvol.45

12月:外食、不要不急品の回復が顕著

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響による異常値で、2021年の同会社発表伸長率から実態を把握することが難しいため、実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本レポートの末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。

22サブセクターのうち、プラスは12サブセクター:

12月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比4.5%増、うち純小売りは1.8%増、外食は10.2%増。プラスのサブセクターは、全22サブセクター中12サブセクター、同2019年対比でも12サブセクターとなりました。

12月は新型コロナウイルスの感染者数が低水準にとどまっていたこともあり、人出は大きく回復しました。前年対比では、居酒屋、ファミリーレストラン、百貨店やアパレルなど、コロナ禍で苦戦を強いられたサブセクターの増収率が特に高くなったことに加えて、リサイクルショップでも、不要不急の高額品の伸長が顕著となるなど、短期的には潮目の変化が確認できる月となりました。一方で、コロナ前の2019年実績との比較では、上記で記載したサブセクターのうち、リサイクルショップを除く全てにおいて、減収が続いており、依然本格回復には及ばない状況が続いています。

天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比4日増、最高気温平均値12.5℃(前年同月比+0.1℃)、最低気温平均値4.0℃(同+0.3℃)となりました。上旬から中旬は寒気の南下が弱かったため気温が平年を上回る日が多くなりましたが、下旬は強い寒気が南下して大きく気温が低下した時期があり、全国的に寒暖の変動が大きくなりました。

曜日回りによる土日祝日の増減はなし。データ集計企業数は、205社(純小売り140社、外食66社)でした。

サブセクター別伸び率:

12月は、前年においても緊急事態宣言がなく、単純比較が可能であることから、以下、前年同月との伸長率を基準にランキングをお示ししております。

上位3サブセクターは、居酒屋(16.1%増)、ファミリーレストラン(11.5%増)、リサイクルショップ(10.1%増)。下位サブセクターは、本・CD・DVD販売/レンタル専門店(9.5%減)、家具・ライフスタイル型専門店(7.0%減)、家電量販店(6.4%減)でした。

サブセクター第1位は居酒屋で、2020年4-5月の緊急事態宣言の反動増があった2021年5月以来、7カ月振りの前年比増収に転じました。個別企業においても、1社を除き、集計企業全てにおいて前年比プラスとなりました。前年増収率が高かったトップ3は、鳥貴族ホールディングス(3193)28.5%増、きちり(3082)25.9%増、大庄(9979)24.0%増。一方、2019年対比では、サブセクター計で26.3%減、最も減収率の低いグローバルダイニング(7625)でも1割減となっており、本格回復には時間を要するものとみられます。

第2位のファミリーレストランは5カ月振りの前年比増収となり、集計企業全てにおいて、プラスとなりました。前年増収率が高かったトップ3は、WDI(3068)24.2%増、サガミホールディングス(9900)14.4%増、ジョイフル(9942)14.1%増。2019年対比でも、フライングガーデン(3317)、「焼肉きんぐ」などを展開する物語コーポレーション(3097)、王将フードサービス(9936)の3社が増収を達成。ハンバーグ、焼肉、餃子などの定番メニューで強みを持つ専門店に復調傾向がみられます。

一方、下位サブセクターの第2位となった家具・ライフスタイル型専門店では、ニトリホールディングス(9843)で12.1%減、良品計画(7453)で1.9%減となるなど、両社ともに前年を下回りました。同サブセクター計では、2019年対比3.4%増と増収を継続していますが、自粛期間中にテレワーク対応を含めた住居関連への支出を増やした流れに一巡感が見られ始めています。

「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。

■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
一家ホールディングス(7127)、鳥貴族ホールディングス(3193)、串カツ田中ホールディングス(3547)

■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
鳥貴族ホールディングス(3193)、一家ホールディングス(7127)、串カツ田中ホールディングス(3547)

既存店客数および客単価の推移:

12月の客数及び客単価は、それぞれ2.8%増、3.0%増となりました。客数は、前年比で7カ月振りのプラスとなりました。特に、居酒屋(12.9%増)、ファミリーレストラン(8.5%増)など、外食の客数増が牽引しました。客単価においては、家具・ライフスタイル型専門店を除く、全てのサブセクターにおいて前年を上回りました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem

2021年1月から採用する新基準概要:

図表3:既存店開示数値の弊社新基準について 出所:Hidden Gem作成

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