月次報告

小売業月次売上高レポートvol.46

1月:外食、不要不急品の回復が顕著

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響による異常値で、2021年の同会社発表伸長率から実態を把握することが難しいため、実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本レポートの末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems
注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。

22サブセクターのうち、プラスは15サブセクター:

1月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比6.3%増、うち純小売りは3.9%増、外食は11.8%増。プラスのサブセクターは、全22サブセクター中15サブセクター、同2019年対比でも10サブセクターとなりました。

1月は月央以降、国内でもオミクロン株の急拡大が始まりました。9日の沖縄、広島、山口に続き、21日より東京都ほか12県、27日より大阪府ほか1道1府15県へ、それぞれまん延防止等重点措置の実施が決定されると、感染者数の急増も相俟って、12月以降回復基調が鮮明となっていた消費マインドを再び冷やしました。まん防実施以降、急速に売上が悪化した企業が多かったものの、月前半の貯金に加え、前年同月は1月7日より首都圏を中心に緊急事態宣言が発出されるなど、前年のハードルが低かったこともあり、7割弱のサブセクターでプラスとなりました。

2019年(コロナ前)との比較では、半分弱の10サブセクターでプラスとなりましたが、プラスのサブセクターは、通販、リサイクルショップを筆頭に、スーパー、ドラッグストア、ディスカウントストアなど、引き続き、生活必需品主体の小売業が占めました。一方、前年同月比での改善が著しい居酒屋、百貨店、ファミリーレストランなどでは、コロナ前に対し、それぞれ4割減、2割減、15%減の水準にとどまるなどし、小売業全体では2019年1月比8.6%減と依然マイナス圏にあります。

天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比横ばい(8日)、最高気温平均値9.4℃(前年同月比-0.8℃)、最低気温平均値1.1℃(同-0.2℃)となりました。年始に寒波が到来し、日本海側を中心に大雪となったほか、関東などの太平洋側の平野でも降雪があり、6日には東京都で10センチの積雪となるなど、2018年1月以来の降雪量となりました。

曜日回りによる土日祝日の増減は祝日1日減。データ集計企業数は、201社(純小売り139社、外食63社)でした。

サブセクター別伸び率:

1月は、前年においても緊急事態宣言がなく、単純比較が可能であることから、以下、前年同月との伸長率を基準にランキングをお示ししております。

上位3サブセクターは、リサイクルショップ(23.2%増)、ファミリーレストラン(16.3%増)、居酒屋(13.8%増)。下位サブセクターは、本・CD・DVD販売/レンタル専門店(7.1%減)、ホームセンター(3.6%減)、ディスカウントストア/100円ショップ(2.0%減)でした。

サブセクター第1位はリサイクルショップ。個別企業では、シュッピン(3179)前年同月比69.6%増、コメ兵ホールディングス(2780)同41.2%増、ハードオフコーポレーション(2674)同15.4%増、トレジャー・ファクトリー(3093)同14.0%増など、同サブセクター内の多くの企業で2ケタ増となりました。

特に伸び率が高かったシュッピン(3179)では、取引量国内トップシェアを有する中古カメラにおいて、昨年3月よりAIを活用し需給に合わせたタイムリーな買取・販売価格の自動設定機能「AIMD」を導入しました。それ以前は、価格の決定をスタッフがアナログで設定していたことで発生していた機会ロスが解消されると共に、お客様が売りたい・買いたいタイミングでリアルタイム通知されるOne-to-Oneマーケティングの仕組みも相俟って、成約が拡大しています。時計事業においても、需要が高い商品ラインの戦略的拡充により、EC売上が大幅に伸長しました。

コメ兵ホールディングス(2780)では、買取専門店の出店や、イベント買取「KAITORI GO」の開催に加えて、お客様当たりの買取金額の上昇などにより、個人買取が好調に推移。ブランド・ファッション関連において、個人の販売だけでなく、オークションなどの法人向けの売上が好調に推移しています。

第2位のファミリーレストランは12月に続く2桁増収となり、集計企業全てがプラスとなりました。コロナ前に対しては、サブセクター全体で依然15%減程度の水準にとどまりますが、王将フードサービス(9936)がコロナ前を越える水準まで既に回復しているほか、ロイヤルホールディングス(8179)が14ヶ月ぶりにコロナ前の水準を超えるなど、少しずつ回復の兆しが見えてきています。

第3位の居酒屋は、ゼットン(3057)を除く全ての集計企業でプラスとなりましたが、コロナ前に対しては、サブセクター計で6掛けの水準にとどまっています。コロナ前に対して増収の企業はありませんが、自粛期間中も営業していたグローバルダイニング(7625)、「ダンダダン酒場」を展開するNATTY SWANKY(7674)がコロナ前対比でそれぞれ14%減、18%減と、最も減収率が小さい状況にあります。

「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。

■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
一家ホールディングス(7127)、鳥貴族ホールディングス(3193)、マルシェ(7524)

■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
シュッピン(3179)、くら寿司(2695)、鳥貴族ホールディングス(3193)

既存店客数および客単価の推移:

1月の客数及び客単価は、それぞれ4.6%増、2.8%増となりました。客数は、2ヶ月連続で前年同月比プラスとなりました。特に、居酒屋(12.4%増)、ファミリーレストラン(12.5%増)など、外食の客数増が牽引しました。客単価においては、スポーツ専門店がゴルフ売上の好調などを背景に10%増と大きく伸長しています。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem

2021年1月から採用する新基準概要:

図表3:既存店開示数値の弊社新基準について 出所:Hidden Gem作成

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