月次報告

小売業月次売上高レポートvol.47

2月:オミクロン株拡大で、売上は再び低迷

Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。

なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響による異常値で、2021年の同会社発表伸長率から実態を把握することが難しいため、実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本レポートの末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 出所:各社データよりHidden Gems
注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。

22サブセクターのうち、プラスは7サブセクター:

2月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比0.9%減、うち純小売りは1.3%減、外食は0.1%増。プラスのサブセクターは、全22サブセクター中7サブセクター、同2019年対比では10サブセクターとなりました。

日本国内でのオミクロン株の急拡大に伴い、1月下旬以降全国的なまん延防止等重点措置が続く中、2月5日には全国の新規感染者数が初めて10万人を超え、2月最終週でも1週間平均の感染者数は6万人を上回るなど感染者数の高止まりが続いたことも相俟って、12月以降回復基調が鮮明となっていた売上基調が一気にトーンダウンしました。

2019年(コロナ前)との比較では、半分弱の10サブセクターでプラスとなりましたが、プラスのサブセクターは、通販、リサイクルショップを筆頭に、中食、スーパーなど、引き続き、生活必需品主体の小売業が占めました。一方、ワースト3位は、居酒屋(52.3%減)、靴・鞄・宝飾品専門店などが含まれる身回り品専門店(25.6%減)、ファミリーレストラン(25.5%減)となるなど、回復基調に水を差す結果となり、外食だけでなく外出時に必須となる靴や鞄の売上にも大きくマイナスとなりました。

天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比2日増(7日)、最高気温平均値10.5℃(前年同月比-3.5℃)、最低気温平均値1.1℃(同-2.3℃)となりました。冬型の気圧配置が強い日が多く、強い寒気の影響を受け、前年同月よりも気温はかなり低く、また、降雪量は多くなりました。

曜日回りによる土日祝日の増減はなし。データ集計企業数は、200社(純小売り139社、外食62社)でした。

サブセクター別伸び率:

2月は、前年においては緊急事態宣言が発令され、今年はまん延防止等重点措置の実施があり、単純比較は難しいものの、双方に制限があったことをご留意ください。

前年同月比での上位3サブセクターは、リサイクルショップ(12.2%増)、居酒屋(2.0%増)、ドラッグストア(2.0%増)。下位サブセクターは、本・CD・DVD販売/レンタル専門店(13.7%減)、メガネ専門店(12.9%減)、身回り品専門店(8.4%減)となりました。

サブセクター第1位は前月と変わらず、リサイクルショップでした。売上回復が鮮明となった12月、1月は、外食や百貨店、アパレル専門店などの不要不急品の回復が全体の牽引役となりましたが、2月に入り、これらのサブセクターの回復が失速する中で、唯一、リサイクルショップは堅調な推移が続いています。個別企業でも、コメ兵ホールディングス(2780)前年同期比45.6%増、シュッピン(3179)同21.8%増が2ケタ増収となるなど、時計やカメラなどの趣味性の高い商品が牽引している状況は変わらずのようです。

コメ兵ホールディングス(2780)では、月央まで銀座店の移転セールを開催していたことに加え、時計の売上高構成比が前年同月比で14ポイント上昇するなど、新品の高級時計の需給が逼迫し、希少性が高まると共に相場が高騰する中、時計が好調に推移しました。

シュッピン(3179)では、取引量国内トップシェアを有する中古カメラにおいて、昨年3月よりAIを活用し需給に合わせたタイムリーな買取・販売価格の自動設定機能「AIMD」を導入しており、カメラは、中古・新品共にバランス良く伸長しています。また、時計事業においても、需要が高い商品ラインの戦略的拡充したことで国内外の知名度が向上し、EC売上に寄与しました。

一方、下位のサブセクターでは、メガネ専門店が大きくマイナスとなりました。前月比でも19.0ポイントのマイナスとなり、全サブセクターの中で前月比での悪化幅が1位となりました。

ジンズホールディングス(3046)19.4%減、ビジョナリーホールディングス(9263)15.4%減、三城ホールディングス(7455)12.5%減となるなど、4.2%減でとどまった愛眼(9854)以外は、2ケタ減となるなど、基調の変化が著しく見られました。ジンズホールディングスでは、オミクロン株の影響に伴う客数減のほか、例年に比べて気温が低く推移し花粉の飛散が遅れたことで、花粉対策用商品の出足が鈍くなったことも悪化の一因として挙げています。

「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:

Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。

■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
鳥貴族ホールディングス(3193)、一家ホールディングス(7127)、マルシェ(7524)

■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
コジマ(7513)、くら寿司(2695)、NATTY SWANKY(7674)

既存店客数および客単価の推移:

2月の客数及び客単価は、それぞれ3.3%減、3.1%増となりました。客数は、昨年12月以降2ヶ月連続の前年同月比プラスとなるなど、回復基調が鮮明でしたが、再びマイナスに転じました。アパレル専門店や身回り品専門店などの衣類・服飾系や、回転寿司、ファミリーレストラン、居酒屋などの外食において、前月に対し客数が2ケタ減となるなど、落ち込みが顕著に見られました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%) 出所:各社データよりHidden Gem

2021年1月から採用する新基準概要:

図表3:既存店開示数値の弊社新基準について 出所:Hidden Gem作成

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