小売業月次売上高レポートvol.49
4月:規制解除で人流増も、コロナ前には及ばず
Hidden Gemsでは、上場企業を中心に月次売上高の開示がある小売業の既存店売上高、客数、客単価を毎月集計し、「小売業月次売上高レポート」と題して、毎月こちらにてご報告いたします。より詳細なデータや概要にご興味のある方は「お問い合わせ」までご連絡ください。
なお、2020年の既存店売上高は新型コロナ感染症の影響による異常値で、2021年の同会社発表伸長率から実態を把握することが難しいため、実態に則した修正を行っております。新基準の詳細につきましては、本レポートの末尾をご覧ください。
図表1:サブセクター別既存店売上高前年同月比伸び率(単純平均)(直近月降順、%) 4月降順
出所:各社データよりHidden Gems 注:通販セクターは既存店売上高開示企業がないため、全店ベースでの数値を採用。上記単純平均値には、通販以外の一部企業で既存店売上高の開示がない企業の値を含みません。
注:新型コロナ感染症の影響で既存店売上高の振れ幅が大きい事から、より実態に近い数値に修正する為、2021年1月より会社開示数値を弊社新基準で表示しております。
22サブセクターのうち、プラスは15サブセクター:
4月の小売業合計既存店売上高は、前年同月比7.0%増、うち純小売りは5.0%増、外食は11.8%増。プラスのサブセクターは、全22サブセクター中15サブセクター、同2019年対比では7サブセクターとなりました。
オミクロン株以降急拡大していた感染者数が緩やかな減少を続けたことや、3月21日を以って、全ての地域での行動制限が2ヶ月半振りに解除されたことを受けて客数が回復し、多くのサブセクターで増収となりました。コロナ禍で落ち込んでいた居酒屋や百貨店、アパレル専門店、ファミリーレストランなどの回復が顕著となりました。
しかしながら、2019年対比でも増収を確保できているサブセクターは、一部に限られます。特に、通販やリサイクルショップでは、3〜4割近い大幅な増収を達成する一方で、居酒屋や家具・ライフスタイル型専門店では3割台の減収になり、百貨店やアパレル専門店などでも、それぞれ10%減、7%減となっています。また、コロナ下で伸長していたホームセンター、家具・ライフスタイル型専門店、家電量販店、ドラッグストアなどでは一巡感が顕著となるなど、サブセクター間での状況は一段と変化しています。
天候要因は、東京都では、降雨日数が前年同月比7日増(16日)、最高気温平均値20.2℃(前年同月比-0.4℃)、最低気温平均値11.1℃(同0.8℃)となりました。平均気温では、最高・最低ともに大きな差はないものの、月を通じて寒暖差が激しい月となり、東京都心で最高気温の前日差が±5℃以上になった日は10日もありました。まとまった雨も多かったものの、東北では4月に真夏日を記録し、北海道では、記録的に早い桜の開花が観測されるなど、全国的に最高気温が高く、アパレルなどの季節商材にとっては追い風となりました。
曜日回りによる土日祝日の増減は土曜1日増。データ集計企業数は、193社(純小売り137社、外食56社)でした。
サブセクター別伸び率:
前年同月比での上位3サブセクターは、居酒屋(18.7%増)、百貨店(16.3%増)、リサイクルショップ(14.9%増)。下位サブセクターは、本・CD・DVD販売/レンタル専門店(7.0%減)、ホームセンター(2.7%減)、家電量販店(2.0%減)となりました。
居酒屋では、自粛期間中も通常営業を継続したグローバルダイニング(7625)を除く全社が増収となりました。居酒屋セクター平均の客数・客単価はそれぞれ14.5%増、9.6%増となり、双方が牽引する形となりましたが、コロナ前の2019年に対しては、21時以降のレイトディナーが回復せず、客数が依然3割減となっています。
百貨店では、各社インバウンドの売上減の影響が強く残るものの、ラグジュアリー関連商材などの高単価商材の好調に加え、衣料品などの回復も後押ししました。
前年同月比では、エイチ・ツー・オー リテイリング(8242)は建て替えていた阪神梅田本店が4月6日に全館グランドオープンを迎え、25.7%増と大幅増収となったほか、三越伊勢丹HD(3099)が21.6%増、髙島屋(8233)が16.6%増、J.フロント リテイリング(3086)が15.4%増と大手百貨店は2割前後増となりました。
一方、下位のサブセクターでは、コロナ特需により好伸長が続いていたホームセンターや家電量販店、スーパーなどのサブセクターが減収となりました。
ホームセンターはケーヨー(8168)が7.8%減、ジョイフル本田(3191)が5.2%減、アークランドサカモト(9842)が4.6%減となり、当社が集計する11社全てで減収となったことに加えて、2019年対比でも0.6%減と変わらない水準まで落ち込みました。
家電量販店では、コジマ(7513)が4.7%減となりました。気温の上昇に伴いエアコンなどの季節商材は30%増と売上を大きく伸ばしましたが、働き方改革などに伴うテレビやパソコンおよび周辺機器などの需要高の反動を受け、こちらも2019年対比では7.2%減と大きく落ち込みました。
「3-12」絶対値・前月比改善トップ3:
Hidden Gemsでは、既存店売上高の3ヶ月移動平均値(直近3ヶ月の平均値)と12ヶ月移動平均値(直近12ヶ月の平均値)の差異を「3-12(さんひくじゅうに)」と命名し、長期月次トレンドに対し、短期月次トレンドが上昇・悪化している企業をピックアップし、紹介していきます。
■ 「3-12」の絶対値トップ3(直近3ヶ月の平均値が直近12ヶ月を大きく上回る):
一家 HD(7127)、鳥貴族 HD(3193)、ジェネレーションパス(3195)
■ 「3-12」の前月比改善トップ3(「3-12」の絶対値が前月に比べて大きく上回る):
アイケイ(2722)、はせがわ(8230)、YU-WA Creation HD(7615)
既存店客数および客単価の推移:
4月の客数及び客単価は、それぞれ4.4%増、4.0%増となりました。感染拡大が落ち着く中、外食の客数増が9.2%増と牽引役となったほか、アパレル専門店や身の回り品専門店など、これまで落ち込んでいたサブセクターの客数の回復が顕著でした。客単価は気温の上昇に加え、2年振りとなる行動規制のないゴールデンウィークを控え、春物衣料品やスポーツ用品のニーズが高まったことや、居酒屋でのアルコール利用が増え単価が上昇し、弊社数値集計開始(2001年1月)以来最も高い伸び率となりました。
図表2:既存店売上高・客数・客単価前年比3ヶ月移動平均値の推移(%)
出所:各社データよりHidden Gem
2021年1月から採用する新基準概要:
図表3:既存店開示数値の弊社新基準について
出所:Hidden Gem作成